◎そうしてスパイラルの果てにと


うぐしし


 夢を見ていたみたいだ。遠い夢を見て、感じて、泣いたようだ。
 目が覚めたらまぶたが腫れぼったかたった。まつ毛が濡れていたのか、目をこすった手の甲が濡れた。俺はどんな夢を見ていたのだろう。忘れてしまった泡沫の夢に思いを馳せながら起き上がる。するとくいと腕を引かれて、見ればそこには愛しい刀がいた。優しい目をして、優しい顔をして、俺の腕をその男らしい手で、今度は強めに引っ張った。だから俺はその隣にもう一度横たわって、嗚呼俺はこの刀の夢を見たのだと気がついた。この刀の遠い昔。俺と出会う前のこと。本人もよく覚えていないような些細な日々を。
(愛ってこういうことなのかな。)
 夢の中ですらも貴方のことが知りたいと願い、夢を見る。そして知ってしまうと、そこに自分がいないことに悲しむのだ。とても身勝手だけれど、万人がそうであることは誰もが自分で知っている。そういうことだ。
「まだ起きなければいけない時間ではないからな。共に寝よう。」
 二度寝を楽しもうと刀は笑った。そうだなと俺は額を彼におしつけた。
(その先でも俺は貴方の夢を見るのでしょう。)
 また泣くことは決まりきっているのだ。



12/28 23:17
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