◎あなただから


燭福


 毒の花。

「これだけ広がっていると、見事だね」
「そうだね」
 審神者が彼岸にと用意した、彼岸花の景趣は審神者曰く、数日間限定らしい。どうしてかというと、審神者は困った顔をして、だってそう長く保つ花じゃないだろう、なんて言っていた。
「光忠は誰かに誘われたりしなかったのかい?」
「何に?」
「何って、数日間限定なんだろう。一緒に見て回りたい刀が沢山いそうなものだけれど」
「数日間だからね。別に全ての日に貴方と一緒にいるわけじゃないよ」
「そんなに自惚れてないよ」
「初日だから?」
「うん。だって、花はきっと、咲たてが一番美しいだろう」
「そうかもね」
「だから、そんな特別な花を誰もが光忠と見たいよ」
 光忠は人気者だから。そう微笑んだ福島の声には、真心が篭っていた。心の底から思っている。それが、とても。
「もどかしいね」
「何がだい?」
 いや何も。燭台切はそう言うと、福島の手を取って、向こうの花も見てみようと導いたのだった。



10/11 18:56
- ナノ -