◎書類仕事の合間に


書類仕事の合間に/こりゅ蜂


 優しい世界ばかりではない事を知っている。でも、辛いだけが生き様ではない事も知っている。
「蜂須賀くん」
 呼ばれて、ハッとする。やあとやってきた彼の手には、氷の入ったグラスがある。
「炭酸水をもらったから、柚子ジャムと割ろうと思ってさ」
 作業部屋に入ると、音を立てないようにジュースを用意していく。
「小竜くん、すまないね」
「ううん。事務作業を手伝ってる刀はみんな忙しそうだから」
「今は長谷部くんたちが会議についていっててね」
「巴くんたちも万屋に買い出しで、だから一人なんだろう?」
「よく知ってるね」
「まあね」
 風の噂だよ。そう笑うと、小竜は柚子ジュースを渡してくれた。蜂須賀は受け取ると、静かに口をつける。炭酸のぴりりとした舌触りと、喉越しが良かった。
「少し休憩だよ」
「そうだね」
「俺が一緒だと休めないかな」
「そんなことはないよ」
 むしろ、落ち着くんだ。蜂須賀がほんのりと照れながら言うと、小竜はそれは良かったと笑っていた。



08/06 21:17
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