◎さくら、だんご


こりゅ蜂/さくら、だんご


 桜並木。春が気に入ってる審神者が、私的な場所だと言い切った桜の園は、常春だ。常ならば、花を咲かせ続けることは木にとって耐えきれぬものだろう。そこは未来の不思議な力でなんとかなっている。
 でもなあ。風情とか、無いのだろうか。蜂須賀はううむと考える。桜は散り際が最も美しいとも言うし。ぐるぐると考えていると、おまたせと小竜がやって来た。
「お茶と団子貰ってきたよ」
「ああ、ありがとう」
「ビニールシートも借りてきたし、座ろう」
 木陰、というより、花の陰だろうか。ビニールシートを敷いて、小竜と蜂須賀が座る。ふわりと優しい風が吹くと、ひらひらと花吹雪が舞った。季節がどうの、風情がどうの。あるけれど。
「綺麗だね」
「本当に、そう思うよ」
 蜂須賀が花吹雪を眺めていると、小竜がお茶にしないとねと水筒を渡してくれた。温かい水筒の中身は歌仙の選りすぐりの茶葉を使ったものだった。いいのかと驚いていると、勧められたんだよと小竜は微笑んだ。
「団子は燭台切が作ってくれたんだ」
「彼かい。彼は器用だからね、楽しみだ」
「だろう。身内の贔屓目だけどね、美味しいと思うよ」
 小竜がほらと出してくれた弁当箱を出してくれた。開くと三色団子が詰まっていた。
「美味しそうだね」
「良かった。味はどうだろう?」
「いただいても?」
「どうぞ。って、俺が作ったわけじゃないけどね」
「それはそうだね」
 いただきます。ぱくりと食べると、蜂須賀はきらきらと目を輝かせた。ひとくち食べて、こくりと飲み込んだ。
「美味しいね」
「それは良かった」
 じゃあ俺も。小竜が手を伸ばそうとして、そうだと蜂須賀が食べかけの団子を差し出した。
「へ?」
「あ、あーん、とか」
「あ」
 むぐ。と小竜が食べる。蜂須賀はぽぽぽと頬を染めた。キミが言い出したのにと微笑んだが、言いはしない。
「ん、美味しいね」
「そっ、そうだね」
「ふふ、ここの桜はいつでも見頃だから、また来ようね」
「……そうだね」
 蜂須賀が頬を染めたまま笑うと、小竜は可愛いなあと笑いかけたのだった。



07/09 22:15
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