◎くいで


鶴獅子


 柔らかな目、穏やかな口、上下する喉。
「鶴丸って"くいで"がなさそうだな」
 獅子王の感想に、鶴丸は笑う。
「俺になくとも、きみにあればいいさ」
「なんだそれ」
「きみは本当に薄くて小さいけれど、柔らかいからなあ」
「鶴丸だって頬ぐらいは柔らかいぜ」
「だろうな」
 ああ、そういうところ。骨張った手が、獅子王の頬を撫でること。
 やっぱり、くいでが無さそうだ。
「なあ鶴丸、なんか食いに行こうぜ」
「刀剣男士の体はそうそう変わらないぞ」
「別にいい。気分だけ」
「そうか」
 獅子王がそうだというなら、蕎麦でも食べに行こう。鶴丸がよっこらせと立ち上がった。



04/15 11:10
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