◎ゆめのやまゆり


膝大包


 ゆめをみるやうに。

 花が咲く。笑う花の、その匂いを嗅ぐ。むせ返るようなヤマユリの匂いに、大包平はうつらうつらとする。
「眠いのか」
 膝丸が声をかけてくれる。大包平はああと頷いた。
 ここのところ、立て続けに遠征が繰り返されていた。そろそろ限界が近い。だからこそ、疲労回復のための休暇が与えられたわけだが。
「膝丸こそ、出陣が多かっただろう」
「まあな。だが、極太刀の必要経験値は膨大らしいからな」
「大太刀ほどではあるまい」
「それはそうだな」
 膝丸が微笑む。大包平はヤマユリを抱いて眠る。ああ、花瓶が。折角の花束が。そう思うと、膝丸がするりと花束を、大包平の腕から引き抜いた。
「飾ろう。きっと花も喜ぶ」
 ああ、それがいい。大包平は笑みを溢し、眠りへと落ちていった。



09/01 16:04
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