◎暗闇


膝大包


 夢から醒めるときみがいる。
 暗闇の中、走る夢を見た。飛び起きて、隣を見る。大包平が静かに寝ていた。そろりと近寄り、胸に手を当てる。上下している。人を模した呼吸が、正常に行なわれている。膝丸は息を吐いた。大丈夫、大包平はきちんとここにいる。
 暗闇の中に、きみがいなかった。膝丸は大包平の隣で眠る。暗闇がほど近かった頃がある。大包平とてそうだ。そして、その恐ろしさを膝丸はよく知っている。
 かつての時代、人が使えた灯りなどたかが知れていて。膝丸はそのか細い光が届かぬ先を知っている。
 大包平は温かい。膝丸はウトウトとしていた。ふっと動く。大包平が目を開いた。
「眠れないのか」
 問われて、膝丸は答える。
「もう、眠る」
 きみの隣。特等席。それを甘く受け止めていると、大包平がそうかと安心した様子で目を閉じた。



07/25 14:13
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