◎夏の日、微睡みは遠い。


さみくも


 夏が来る。蝉の声が遠い。蜃気楼がゆうらりと見えた気がした。
「あつい」
「そうですね」
 冷房機が壊れた部屋で、五月雨と村雲は過ごしていた。明日には直ると言われたそれに、だったら一日ぐらい我慢するかと、休暇も相まって、二口はのんびりと過ごしていた。
「暑いよ」
「冷房の効いた部屋に移動しますか?」
「いや、いい。雨さんと一緒がいい」
「では私も移動しましょうか?」
「やだあ」
 寝転がった村雲が、嫌々と頭を振る。そうですね、五月雨は微笑んだ。
「私も雲さんとふたりきりがいいです」
「わ、ひとりじめ!」
 やったあと、村雲はへらりと笑った。



07/15 04:23
- ナノ -