◎写真機


膝大包


 無骨な指先だ。なのに、とても美しく見える。

 大包平の手が写真機を触っている。これで風景を切り取るのだ。大包平は真面目に言う。膝丸はそうかと頷いた。
「いつか鶯丸が来たときに、この本丸の日常を見せてやろうと思ってな」
「それはいいな。俺も兄者に見てもらいたい」
 では、ふたりで使ってみよう。大包平は言う。いいのか。膝丸が問うと、そもそもと大包平は言った。
「俺が撮ったら俺が映らんだろう」
「そうだな」
「お前が撮ったらお前が映らん」
「そうなる」
「それでは意味がないだろう」
「そうか……?」
 膝丸が首を傾げる。はて、兄者は自分を見たいだろうか。分からない。
「兄弟なんだろう」
「それはそうだが」
「俺は兄弟かは知らんが、同派だからな。俺は大包平なのだから見たいだろう」
「きみは美しいからな」
「お前こそ綺麗だろう」
「俺はあやかし斬りの刀だぞ」
「源氏の重宝だろうに」
「それはそうだが」
 きみの美しさには比べられないさ。そう言うと、当たり前だと大包平は呆れた。
「俺は美しい。そう望まれたのだからな。お前こそ、宝としての側面があるだろう」
「たしかに」
「お前の兄も見たがるだろう」
「そう、か……?」
「そうだとも」
 大包平は自信ありげに笑う。その自信につられて、膝丸も笑みを浮かべた。



01/25 22:29
- ナノ -