◎尾鰭のない鳥


アンバランスじじしし/不安定


 ぐら、ぐらりん。
 差し出された手に戸惑えば、三日月は静かに言う。これは命綱なのだと。
「不安定であやふやな俺たちはこうするしか手がないのだろう。」
 そう言われてしまえば俺はその手を取るしかなくて、でも三日月の命綱になれたらこんなに嬉しいことはないし、三日月が俺の命綱になってくれるのならそんなに嬉しいこともない。綱渡りで不安定な生を生きる俺たちの、命を保つ為の簡単で重大な命綱は紛れもなくお互いであるのだということが何よりも嬉しかった。
 ひどくふらふらとした日常を送っていたのだ。それに三日月が気がついたのはつまり三日月も同じ側面があるからだ。ひとは経験しなければ誰かを思いやることすら出来ない。そういうものだから、きっと、そういうことなのだ。
 三日月が笑っている。安心を伝えてくる笑顔に、俺は同じ笑顔を返した。俺は心底安心していたし、三日月もきっと同じなのだと確信が持てたからだった。



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10/18 00:46
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