◎怖がりの末路


じじしし/怖がりの末路/獅子王が恋愛に怖がりで、三日月がヤンデレ一歩手前ぐらいのイメージです


 例えば、折れることだとか。
 死ぬことのその先を想うことは無駄だと鶴丸は笑う。どうせ俺たちに生物と同じ死は訪れないのだから、考えても答えなどないのだと。だってまず問いが成立しないのだから、解答なんざ存在しないのだと。
 隣に座る三日月宗近は穏やかな日差しの中でうつらうつらとしているようで、寝てしまえばいいのにと思う。そして起きた時に最初に見るのが俺であってほしい。何より崇高たる三日月のなにかの初めてを得られるなら、そんな些細なことでいいのだ。欲を出してしまえばきっと三日月は離れてしまう。それは何と無く分かっていた。きっとそれは獅子の名を冠する故の呪いと、これでも平安から生きている経験から導き出されたモノだろう。戦場で何度も助けられるソレが、今だって役立った。三日月に嫌われずに済むのだから、何より役立った事項だろう。
 三日月からそっと離れて何か掛けるものを持ってこなければ。いくら暖かな日であっても外で昼寝をしてしまえば何かしらの不調へと発展するだろう。
 離れようとすれば、パシッと音を立てて腕が握られる。その素早さに、微睡みの中にいたのではなかったのかと驚いていれば三日月ににこりと笑う。
「離れるな、獅子よ。」
 その有無を言わさぬ口調に、言葉を失えば三日月は続ける。
「それともじじいの隣は嫌か。」
 そんなことはどう間違ってもありえないと否定したいのに、喉がひりついて声が出ない。それは三日月を中心に渦巻く空気が原因で、確かに穏やかな日差しが支配する空間だった筈なのにもう別の場所みたいになっていた。まるで襖も障子も締め切った薄暗い部屋の中みたいに、冷たく隔離されたような場所。
「三日月宗近の隣が嫌だと言うか。」
 にこりと笑んでいる筈なのに、目が鋭利な刃物みたいだ。
「そんな、わけない。」
 何とか声に出せば、男は満足そうに俺を引き寄せたのだった。



04/27 22:54
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