いちしし/わずかな哀愁
一期、何してるんだ? ああ、水風船を作ってるのか。風船釣り、楽しいよな。
いつかの夢を見た。あれは去年の夏の話だろうか。まだこの本丸に太刀以上の刀剣男士が少なく、私と獅子王は数少ない太刀でした。
遠征や出陣の合間、数少ない休暇の夏の日。夏祭りの真似事をしようと主は言いました。私は水風船釣りを担当し、水風船を幾つも作っていました。赤青黄色、混色、縞模様。水玉。色々な種類がある。いつの間にか遠征から帰っていた獅子王が私の手元を覗き込み、言ったのだった。
夏の日差し、暑い。今年の本丸は去年より暑い気がする。主が暑い夏が好きだと言っていたからだろうか。この本丸は主の思うがままだから。
隣で獅子王がかき氷を食べながらばてている。今年は去年より暑いと言いながら、いちご味のかき氷を食べていた。そういえば、と獅子王は言う。
「また縁日やるみたいだぜ。」
「そうなのですか。今年も私は水風船釣りに割り当てられるのでしょうか。」
「いや、俺と一期で射的だってさ。」
「それはまた、大変そうですな。」
けれど、と獅子王は言う。
「今年は刀剣男士が増えたし、もっと楽しくなりそうだな。」
微笑みに、私はそうですなと笑みを返したのでした。
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恒星のルネ