▼ トランプになぞらえて
Mar 29, 2022(Tue.) 10:09
ギーマ→ミナキ



 くるくるとまるでカードが踊るように彼は手を動かす。そして私に気がついてニコリと笑った。
「カントー、いやジョウトの人かな?」
「出身はカントーだぜ。こんにちは、君はなんていう名前だい?」
「私はギーマ。きみこそ、名前は?」 「私はミナキ。こちらには研究の関係で来ているよ」
 そう言うと、ギーマは息抜きかいと笑んだ。それもそのはず、ここは街のバーだ。私はそうさと笑ってソフトドリンクを頼んだ。ギーマもソフトドリンクで、どうやら今は酒を飲む気が無いらしい。
「ミナキは研究者なんだね」
「ああ。ポケモンの伝説を主に考えているぜ」
「ポケモン伝説なら英雄の話かい?」
「英雄、か。確かこちらの伝説だったな」
「それならばお話しようか?」
「いや、息抜きだからやめておこう。あまり根を詰めると旧友に叱られるからな」
 思わずクスリと笑うとギーマは仲が良いんだなと笑んでいた。私は頷いてクラッカーを食べた。ジャズの音楽の中で、ギーマは再びカードで遊ぶ。その動きをじっと見ているとギーマはやってみるかいと言った。私は首を横に振る。
「ギーマの動きを見ている方が面白いだろう」
「おや、それは嬉しいね」
 ギーマはニコリも笑んだ。だから私も笑った。

 しばらく喋って、そろそろ出ようとするとギーマが紙切れに何かを書いて渡した。
「ライブキャスターの番号だ」
「けど私はライブキャスターを持ってないが…」
「それでも持っていてほしい。気が向いたら連絡をくれると嬉しいよ」
 ギーマの何処か拒絶し難い声に、何と無く頷くとギーマはそれじゃあとゲームが行われているテーブルへと向かった。私はそれを見てから紙切れをポケットに入れて外へ出た。色々な出会いがあるな、と少し感慨深く感じたのだった。



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