▼ うっかり恋に落ちまして@微妙に病グロ
Mar 29, 2022(Tue.) 09:55
薬獅子/!微妙に病んでる!/!微々たるグロテスク!/うっかり恋に落ちた薬研さんが疲れてる


 例えばである。獅子王がただの刀であり、人型をとっていなかったとしよう。そうすれば俺はその刀を丁寧に折って、粉のようにすり潰して、それから口に含んで、唾液と混ぜてから飲み込むだろう。それはきっと俺専用の薬であり、何よりも幸福を与える毒薬だ。
「いや、何言ってんの。」
「冷ややかな目だな。」
「当たり前だろ。」
 とうとう薬研がおかしくなったと獅子王はため息を吐きながら薬草の仕分けに戻った。
「こんな薄暗い部屋にばっかいるから気が滅入るんだって。もっと外出ろよ。」
「出陣も遠征もちゃんと出てるがな。」
「それとこれは別だろ! とにかくあれだ。休めって。」
 ほらあとはこれを仕分ければ当面は大丈夫だろと獅子王は言う。その手の中の薬草を見て、それもそうだけどと俺は息を吐いた。ため息ととった獅子王が俺へと顔を向ける。
「どうした?」
「いや、何。何か手を動かしてないと変なこととちりそうでな。」
「もうすでに手遅れだから。」
 ぺしりと頭を叩かれたので痛いと文句を言えば、獅子王は再度寝ろという。
「そんなに寝たくねえなら添い寝してやるよ、坊主。」
「……アンタ、たまにひでえな。」
「はいはい。」
 見も心も年下だということを気にしているのに。そう考えていたら、いつの間にか鉄の粉が要らないような気がしてきた。嗚呼、そうか。
「獅子王。添い寝、頼むぜ。」
 そう言って薬草片手に座っている獅子王の背中にのしかかれば、まかせろと気の抜けた声が返ってきた。でもその声がとても温かくて、今度は一緒に飯が食いたいなあと思ったのだった。



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