ルリソニ
世界中にひとつだけ、宝物があるとしたら。ソニアは思う。それこそが、ルリナだろうと。
雑誌のページを捲る。ルリナとドラパルトを起用したアクセサリー広告が目に入る。キラリと妖しく光るそれに、そっと目が吸い寄せられる。
すてき、だなあ。ソニアはくしゃりと笑う。
こんなにも遠い人。こんなにも素敵な人が、恋人だなんて、勿体無い。ぐるぐると考える。
きっと、ルリナにはもっとふさわしい人がいて、ソニアにもそれなりの人がいるのだろう。
でも、出会ってしまった。時を重ねてしまった。眼と眼が合って、バトルをしなかった。
それこそが、トレーナーを諦めたソニアと、戦い続けるルリナの答だ。
「何してるの?」
トン、と置かれたミルクティーは、ソニアの好きな水色で。モーモーミルクたっぷりのそれに、また涙が溢れた。
ルリナは焦ることなく、ソニアの目元をハンカチで押さえる。
「そんなに寂しいの?」
「寂しくない」
「悲しいの?」
「悲しくないよ」
唯。
「つり合いたいと思って」
そう言うと、ルリナは、何それとクスクス笑った。
「わたしが選んだのに?」
つうっと、頬を褐色の指が滑る。それに、ぼっと頬が熱くなる。
「ずるい」
「ええ、そうね」
「わたし、ルリナが好きだよ」
「知ってるわ」
「ずるい」
「そればっかり」
「だって」
ルリナは強いから、でも、知ってるから。
「どうしてルリナはそんなに立っていられるの」
わたしはね、まだ怖いよ。そう呟くと、ルリナはにっこりと笑った。
「わたしだって怖い。でも、ソニアがいるなら、強くあれるわ」
不思議なくらい。ルリナは歌うように言う。
「不思議なくらい、怖くなくなるの。ソニアにはね、そういう力があると思うわ」
「えー、なにそれ」
そんなの無いよ。ソニアがティーカップを持つと、ルリナはそういうところよと笑っていた。