やなさく
季節外れの桜の花が咲くと聞いて、柳君と二人で見に来た。
「狂い咲きですね。」
「そうだね、こんな時期に咲くなんて」
私はそう言うと、桜にそっと手を伸ばした。私の指先が桜の花びらに触れる。薄くて柔らかいな桜の花びらはすぐに空気に溶けて消えてしまいそうだと思った。
「綺麗ですね」
柳君がそう言うから、思わずという様に柳君を見た。柳君はまっすぐこっちを見てて、その真っ直ぐな瞳がとても綺麗だった。
「綺麗だね」
だから私はそう言って微笑んだ。
突風が吹いて、桜が舞う。柳君は私に近寄ってきて、優しく笑んでくれた。
本当に綺麗です。と、微笑んで言う柳君。桜よりよっぽど綺麗なひとに見えて、やっぱり私は本当に綺麗と呟くしか無かった。
狂い咲き
(桜を見る河野さんがとても綺麗で)
(こんなに優しく微笑む柳君を見たことないよ)