安田×井浦
そっと落とされたそれに、俺はただ瞬きをした。それだけだった。
「驚かねえのか」
「驚いた」
そう、と安田は呟く。そしてまた同じそれを落とした。最初は額、今度は頬だった。
「そういえばさ、格言ってあるじゃん」
「そうだな」
安田は手の甲にそれを落とす。
「意味あんの」
何が、何に、それらの言葉は要らなかった。ただ安田は嗤うことなく、無表情のまま、言った。
「ねえよ」
だから俺は瞼をおろして言う。
「あっそ」
落とされた口付け
(口にはしないの)
(してほしいのか)
(そういうわけじゃない)