▼ 白黒の青春時代@学パロ
Mar 26, 2017(Sun.) 15:28
白黒の青春時代/堀清/学パロ
タイトルは207β様からお借りしました


 モノクロって便利だと思う。
 例えば、俺たちの関係。俺は安定と一緒だと世界に色がついたような安心感を覚える。そして堀川は和泉守と一緒にいると、色がついた笑顔を見せる。そして俺と堀川が二人だと、どうにも居心地が悪くて、世界の色が褪せて見える。そんな気がするのだ。
 でも、そう考えるのは、俺が堀川を意識しているからだろう。一緒にいて色を感じない、どうでもいい人なんて山ほどいる。その中で、堀川との関係をこうして問題視するのは、やっぱり堀川のことを意識しているからだ。
 俺は堀川のことが好きだ。でも堀川は特に何も言わない。察しの良い彼が気がついてないわけないと思うのだが、何も言わない上に態度も変えないということは、気がついていないのだろう。離れられたら悲しいけど、気がつかれないのもそれはそれで悲しい。その事を一度安定に相談したら、あっそうと興味無さそうにハンバーガーを食べていた。いくらハンバーガーショップとはいえ、ほぼ無視してまでハンバーガーを食べなくてもと俺は軽く落ち込んだ。いや、普段はそんな適当な返事で落ち込むことはないのだが、堀川の事を考えてナイーブになっていたのだ。察してほしい。

 学校、剣道部の部室から出て、安定を待つ。登下校はいつも安定と一緒で、たまに和泉守と堀川の二人も加わる。今日は四人でコンビニに寄り道すると決めたから、二人も加わることが確定していた。爪の手入れが行き届いているか、髪が乱れてないかを、鏡が無いなかで何とかチェックしていると、加州君と声をかけられた。その声は堀川のもので、俺は急ぐ心を落ち着かせて振り返った。
「お待たせ。帰ろっか」
「え、あれ? 安定と和泉守は?」
「少し居残り練習するって」
 下校時間なのにねとクスクス笑う堀川はどうやら止める気が無いらしい。あいつさっき約束したのにと煩い心臓を気にしながら言えば、そういうこともあるよと堀川は微笑んだ。
「さあ行こう。加州君は何が食べたい?」
「え、あー、別に」
「肉まんを奢ってあげるね」
「ええ、いいよ別に」
 遠慮しないでと堀川は俺の手に触れた。あっという間にその手の指と俺の指が絡む。ただ手を掴むのでも握るのでもなく、指が絡んだ所謂恋人繋ぎに、俺の顔がとうとう赤くなってしまった。でも振りほどく何て出来なくて、俺は先を歩く堀川が振り返りませんようにと願った。
 前を向いたままの堀川が、加州君には飴も買ってあげよう何て言うから、そんなにいらないと俺は少し早口で応えた。すると堀川がふふと笑う。後ろからじゃよく見えないその笑顔を感じた瞬間、心の中でぽっと明るい色が輝いたような、そんな気がした。



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