▼ 君を蝕んでは食した心の蔵
Mar 31, 2016(Thu.) 16:48
いちあい/一期一振×愛染国俊


 食べれたらよかったのにね。

 愛染の目が動く、じろり、男を捉えた。
「一期さん、どうしたんだよ。」
 後ろに立っていた青年の姿をした刀に問いかけた。するとその刀たる一期一振はクスクスと笑って愛染の首に指を絡めた。
「ばれてしまいましたか。」
 愛染は短刀だからなと冗談交じりに言い、一期は素晴らしいことですと笑った。
 指が首から離れ、そろりと耳たぶに触れる。そのまま指が耳を弄るのを、愛染はため息ひとつで受け入れた。
 貴方はよく頑張っていますね。そう言いながら頭へと移動した手は、ゆっくりと頭を撫でた。先程までの妖しさを一切纏わぬ、理想の兄を求めた指先に、愛染はげんなりとした顔をした。
「それで、何の用だよ。」
 とうとう愛染が一期へも振り返ると、彼は瞬きをして驚き、それからふわりと綺麗に笑った。
「今日は弟たちが出陣しているので。」
 その言葉を聞いて、愛染は目を細める。そしてぱちりと開いて、明るく笑って見せた。
「さみしいのなら隣にいてもいいぜ! 」
 そうして手を差し出すので、一期は不満そうにその手を握り締めた。
「分かっているでしょうに。」
「しーらね! 」
 主さんにお菓子貰おうぜと愛染は手を繋いだまま走り出し、一期は危ないですよと言いながら必死に足を動かしたのだった。


title by.水魚



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