▼ 1から100まで、奪えばいいよ
Mar 30, 2016(Wed.) 01:20
花リコ


 意外とめんどくさい男なのね。

「アンタ、何でこんなとこに居るのよ。」
 下校時、帰り道。家の近くの公園を突っ切って近道しようとしたらそいつはいた。にっこりと笑って、偶然だねなんて言う。何て吐き気がしそうな態度!
「じゃあ私はこれで。」
 そうして踵を返そうとすれば、まあ待てよと腕を掴まれる。悪童の、あの手が。
「何よ。」
 睨めば、彼はにこりと笑う。
「ハッ、ツレねえな。送ってやるよ。」
 いらないって言おうとして、ため息を吐く。だって言ったってどうせ聞かないのだ。不毛な争いはしたくない。というか出来るならば致命傷を一撃ぐさっと叩き込みたい。
「じゃあ行くか。」
「え、あ、ちょっと! 」
 腕を掴んでいた手を滑らせて、手と手が絡む。嗚呼、こいつは男だったなと、手の大きさで感じた。無性に腹立たしいけれど。
 ふと、気がつくとしっかりと絡んだ手に力が込められて、痛かった。痛いと伝えれば、少しだけ緩む。不審に思って見上げれば、彼は前だけを見ていた。バスケにもその姿勢でいてほしいというか、そうであれよ何なのコイツと思っていると、ふと耳が赤いことに気がついた。
 まさかと思っていると再び、手に力が込められた。ああ、正解なのね。
「……奪いたいのなら、全て奪ってみせなさい。」
 どうせ奪えないものと笑ってやれば、奴は目を丸くして、上等だと嗤った。



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