薬愛
この星は青いんだって。
「そもそも地球が丸いことだって信じらんねえのにな。」
でも、水平線は真っ直ぐに見えて、先が見えないのはこの星が丸いってことなんだろう。
愛染は笑った。晩春の明るい海辺でぱしゃりと足を遊ばせる。靴下も靴も脱ぎ捨てて、彼は海へと駆けて行った。深くには行くなよと声をかければ、足だけだからと大声を上げた。
「海って青い! 」
ほんとに綺麗だと笑った愛染は、とても綺麗だと思った。女性的なものではなく、魅惑的なものもなく、ただただ魅力的な、きらきらとした輝きを感じた。
眩しいなあと目を細めれば、彼がくるりと振り返った。そして、手を差し伸べる。
「薬研もこっち来いよ! 」
冷たいからって笑った愛染は青い海を背負っていて、まるで彼の為に全てが誂(あつら)えられたようだった。
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