◎愛と調べと滅びの話


 窒素の壁すら、もどかしい。いつまでもその手に触れていたいと思う。あなたの節榑立だった長い指と自分の指と溶け合うまで絡めていたい。肩を寄せてほんの少しもたれ掛かって、あなたの囁きを近くで聞いていたい。あなたの紡ぐ愛の言葉に、自分も応えていたい。あなたからもらった愛を、もっと大きくしてあなたに渡したい。いつの日か老いて亡くなるその瞬間まで、あなたと共にいたい。この世を離れてすら、あなたと共にいたいのが本心だけれど、それは俺には分からない領域だから、せめてこの世ではあなたと一瞬一瞬を共にありたい。
「中原君」
 名前を呼ばれてあなたを見れば穏やかに微笑む姿があって、俺はとても幸せな気分になる。おいでと腕を広げられて、そろりそろりと近寄って抱きつく。するとあなたは俺の背中に手を回し、優しく抱きしめてくれる。二つの鼓動が心地良くて、あなたの匂いがして、クラクラとする。好きだ、好きだとうわ言の様に呟けば、あなたは知っているよと笑う。
「ぼくも愛しているよ」
 抱きしめあって、俺たちは今日も互いの愛に溺れるのだ。


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