◎シュガー・シュガー


宮中


 いつだってぼくは、中原君が砂糖菓子のようだと思っている。
 砂糖菓子は甘くて人を虜にする。そして溶けて跡形も無く目の前から消えるのだ。その様に、中原君もぼくを虜にし、そしていつか消えるのだろう。それが寂しいと泣き喚く程、ぼくは子供では無くなってしまっている。だからせめて、今この一瞬一瞬を大切な時間にしたいのだ。中原君と穏やかで幸福な時間を紡ぎたい。
 いつしか、中原君はぼくに言った。
「宮沢サンは砂糖菓子の様だな」
 とんでもない、とは言えなかった。その真剣で、どこか潤んだような目には言えるものではなかった。きっとその時の中原君は切なかったのだろうと思う。そう、もしかしたらぼくと同じことを考えたのかもしれない。いつかの終わりを、不透明な未来を。人はそれに恐怖を抱くのが大多数なのだから、言うなれば極当たり前のこと。
 それならぼくはと考える。中原君が気がついてしまったのなら、それなら今までより共に居ようと。その寂しさと恐怖に寄り添おうと。いつかの終わりの、その日まで。
「だから隣にいさせてくれないかな」
 そう言ったぼくに、中原君は破顔して言うのだ。
「そんなの、当たり前だろ」
 やっぱり中原君は砂糖菓子なのだ。


10/02 03:49
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