◎故に意図の@夏目と中原


故に意図の/夏目と中原/追記に解説的蛇足


 指先から垂れるは金糸のきらめき。
 縫い物をしていた彼女を見ていたら渡されたのだと中原君は困ったように言った。通りがかりの私はそうかいと返事をして牛乳を温める。蜂蜜をひと匙入れて、甘い匂いに満足する。麦茶を飲んでいた中原君は温かいものにするのかと不思議そうだ。
「甘いものを飲みたくてね。前に板垣君が作ってくれたこれを思い出したんだよ。」
 へえと中原君は言い、指に絡まっている金糸をするすると解いて机の上に置いた。私は牛乳が良い頃合いになったので火から鍋を降ろし、マグカップへと注いだ。少しばかり蜂蜜の色が付いた牛乳はなんとも美味しそうな匂いをしている。
「ホットミルク、と言うそうだよ」
 私の言葉に中原君は知っていると微笑んだ。細められた目は黄色か、それとも。
「ねえ、きみ」
 どうしたと不思議そうにする中原君に、マグカップを差し出す。不可思議だと言わんばかりの目に、笑う。
「ひとくち、どうだい」
 きみの色に似ているだろう、と。

追記

09/23 19:09
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