◎物書き@夏目と中原


夏目と中原/少し子どもっぽい中原さんとおじいちゃんみたいな夏目さん


 コツコツと鉛筆で文字を書く。途中で間違えては線を引き、その隣に正しい単語を書いては文章を書く作業に戻る。そんな私の隣では、興味深そうに中原君が紙面を覗き込んでいた。そんなに気になるかいと言えば、勝手が違うものだからと中原君は言った。
「でも良いのか?」
 その問いかけに何がだいと問えば、自分が見てもいいのかと中原君は言った。見たいと言ったのは君じゃないかと笑えば、そうだけどと口籠った。
 気まずそうだが、興味深そうにしている中原君は、いつもの外套と帽子を抜いで傍に置いている。さらさらとした紫色の髪が障子を挟んだほのかな太陽光で控えめに輝く。中原君が私の名を呼んだ。
「なんだい」
「いや、少しぼうっとしてただろ。何かあったのかと思ったんだ。」
 私を気遣う言葉にありがとうと微笑み、何でも無いのだと告げる。中原君はそれならいいけれどと身を引いた。
 再び紙面に向かい、鉛筆を走らせる。そんな鉛筆の先を熱心に見つめる中原君に、私は笑みを一つ溢した。


09/23 16:21
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