◎三日月の星空@ガリレオと中原


ガリレオと中原/追記に蛇足的解説


 星空の下、赤いフードを揺らして双眼鏡から顔を上げた。煌めく星たちはそれを通すとより美しくなるが、己の目だけで見る星たちも美しい。月明かり少ない夜、星たちの煌めきが何よりも映える日だった。
「ガリレオか」
 かさりと草を踏む音と声に振り向けば赤いリボンを揺らしてこちらに歩いて来る男、中原さんが居た。
 中原さんは明日はこの地を出るのだから早めに寝るようにと言いながら、ガリレオから少し離れた場所で立ち止まる。そして空を見上げて、ほうとため息を吐く。
「綺麗だな。こんな星空は中々見ない」
 そう言うと中原さんは口を閉ざしてこちらをちらりと見、すぐに空に視線を戻した。口を薄く開き、そこから少しだけ白くなった息を吐きながら、じっくりと星空を眺めている。
 私ももう一度と双眼鏡を覗き込む。きらきら、きらきら。星たちの複雑な輝きが美しくて、好きだと思う。私は何よりも星が好きで、星を眺められるなら何処へだって居てもいいと思う。それはこの地に立ってから、より強くなった。
 ふと、双眼鏡から顔を離して中原さんを見る。満足そうに見上げる中原さんの紫色の髪が夜の中でまるで夜のほんの少し前の、濃い紫となっていた。その髪が揺れたかと思うと、中原さんの黄色の目がこちらを見ていた。どうした、と音に無い声が聞こえた。
「あの、中原さんこそ早く寝ないのですか」
 取り繕うようにそう言えば、中原さんは少し目を開き、そして笑った。
「もう少ししたら帰るさ」
 笑う為に細められた黄色の目が、優しそうであって、嬉しそうでもあった。中原さんは続けた。
「お前も寝ろよ」
 楽しそうに、何より嬉しそうな声に、私は頷くことしか出来なかった。

追記

09/18 20:14
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