◎サイダー・サイダー


宮中


 宮沢サン。中原は笑う。
「いい土産を貰ったんです。一緒にどうですか?」
「お土産?」
 宮沢がきょとんとすれば、太宰たちからの土産ですと答えた。
「サイダーを二本! 宮沢サンと飲みなってことらしくて」
「それはいいね」
 それにしても、彼からの、か。宮沢はうっすらと思う。太宰に恨みは無いが、中原と仲良さそうにしていると、モヤモヤとするものがある。
「きみの、」
「はい?」
「恋人は、ぼくだよ」
 中原は、ぽぽぽと、頬を染めてから、答えた。
「そんなの、当たり前ですってば!」
 ああもう、恥ずかしい。でも、幸せだ。中原がぶつぶつと呟いているのを眺め、宮沢はぽんぽんと背を撫でてみせた。
「じゃあ、向こうのベンチで飲もう。冷えているよね?」
「はい! ちゃんと冷してきました」
 夏の暑い日にはサイダーに限る。そう歌う中原が宮沢の隣を歩く。
 きみならお酒が飲みたいだろうに。そう思いつつも、言わなかった。宮沢は、中原と共に居たかったからだ。


08/31 07:44
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