◎もし、神様がいるとしたらきっとその姿はきみに似ている


宮中/もし、神様がいるとしたらきっとその姿はきみに似ている/優しさの成れの果て/信仰される側の視点


 もし、神様がいるとしたらきっとその姿はきみに似ているのだろうね。なんて宮沢サンが言うものだから俺は驚いてしまって、目を丸くしてその人を見つめることしかできなかった。発言者であるその人つまり宮沢サンは優しく微笑んだまま、一定の距離感を持って俺の前に立っている。どうしたのか、どうしてしまったのかと言おうにも喉がひりついて言葉がうまく出せない。指先が震えてしまうこれは恐怖によく似ていた。
「明日になってもきみはきみの侭かな。」
 その目は底無しに優しくて、その視線で俺の脳味噌がどろりと溶けてしまいそうだ。熱い視線ではないのに、それは何より甘美な毒だ。
「ねえ、中原君。何を食べたいかな。欲しいものはでき得る限り集めてあげよう。」
 宮沢サンは微笑んだ侭、指を折ってあれかこれかと候補をあげる。その中に俺の欲しいものもある筈なのに、どうしてかそれだとは言えなかった。甘い毒が俺の脳味噌を溶かし、思考を麻痺させる。
「明日が過ぎ、明後日も過ぎたいつかならぼくは君に触れられるかな。」
 毒で溶け切った脳味噌。そんな思考でも、宮沢サンのその目が優しさに似た別のものだとやっと分かった。
「ね、なかはらくん」
 それは俺の名をかぶった かみさま だと。


03/15 00:03
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