◎せめてこの世だけは


さこみつ
左右を判断出来てません。左近さんの独白。追記に蛇足。


 隣同士に座ること。前ならば考えられないほどのこと。三成様は笑って勧めるし、ここでは規則が随分と緩やかだ。咎めるヒトなんて居ないに等しい。罪悪感は自分だけのもの。なんて優しい夢なのだろう。三成様が茶を淹れてくださって、笑ってくださる。なんて優しい世界だ。
(此処でなら、三成様も上手く生きれるのじゃないか)
 オレ達が生きた、あの世の中よりずっと生きやすいのじゃないかなんて、夢物語を考えるほどに。そしてそんな三成様の隣に居られたら、どんなに幸せなのだろうと。罪悪感を胸の内に秘めて、錠前をかけて、鍵で閉じて。誰にも見られないようにして。そしてそんな風に隣で笑えたら、どれだけ幸福なことか。
(全部、オレの夢想でしかないが。)
 どうしたって三成様は元の世の中へと帰るのだろう。オレを聞き入れなかったあの時に戻られるのだろう。それを悲しいだなんて思ってはいけないのに、心が涙を流す様だ。
(無常、無情、死んだ後なんて分からないのだから。)
 せめてこの世界で笑っていてほしいのだ。

追記

10/26 00:15
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