◎ショートケーキのいちごみたいに


笠今♀/今吉さんが桐皇の女子マネです/恋人同士です

「あ、笠松や」
「ああ、今吉か」
 街中、すれ違ったものの、互いを認識した二人は立ち止まった。笠松は背中にギターケースを背負っており、立ち止まると少々通行人の邪魔になる。お茶でもしよかと、今吉が近くの喫茶店に笠松を連れて行った。

「ギターの調整をしてもらったんだ」
 定期メンテナンスみたいなもの、最近は時間がなかったから。笠松はコーヒーを待つ間に答えた。今吉は楽器も大変なんやなあと興味深そうに聞いていた。
「ワシは釣具見に行ったんやで。新しい釣り針がほしくてなあ」
「そうか」
 笠松はそう言って、届けられたコーヒーを口にした。今吉はブラックコーヒーを飲みながら、そういえばと不思議そうにした。
「笠松って女の子苦手やん?」
「おう」
「それなのに、よくワシと付き合おう思ったな」
「別に、今吉が男性だろうが女性だろうが、関係なかった」
「なんやそれ」
「同じようにバスケが好きで、のめり込んでて、同じだけの熱量があるお前だから好きになったんだ」
 そこに性別は関係ない。笠松はきっぱりと言い切った。今吉は、鈍感なんだか鋭いんだか、それとも男前なんだかと苦笑した。
「ま、告白に答えたワシもワシやな」
「だろうな」
 その答えに今吉は満足そうにすると、そうだと思いついたように口にした。
「そういやケーキ頼んでええ? 実はな、小テストで満点だったお祝いに遊びに出てきとったんや」
「そりゃいいな。頼んどけ。俺はサンドイッチにする」
「ん、ほな店員さん呼ぼか」
 すんませんと声をかけた今吉に、笠松は、相変わらず地頭のいいやつだなと息を吐いた。

12/09 18:03
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