睨まれてる。

絶対睨まれてる。


午前中の試合の記録整理をしていると突き刺さるような視線を感じた。


少しだけ視線を上げてみると離れた場所から鋭い目つきをしている影山くんと目が合った。


「ひぇ…っ」

思わず小さな悲鳴が上がり、すかさず視線を下げる。

自分が何かをしでかしてしまったのではないかと頭をフル回転させる。が、


…だめだ。何も思い浮かばない。

というよりも、そもそも今日は彼とほとんど会話をしていないはずだ。


テンパっている私をよそに影山くんからの鋭い視線は刺さり続ける。



「あの、」
「…えっ」

頭上に降ってきた声に驚いて再び視線を上げる。


「ちょっと聞きたいことがあるんだ…ですが、」

だ、ですが…?
あ、敬語が苦手なんだっけ。


少しほぐれた空気に思わず口元がゆるんだ。


「聞きたいことって何?」

影山くんから振ってきた話題なのに、どこかバツが悪そうに小声で何かを呟いた。



「ごめん、上手く聞き取れなかった」
「っさゆさん、はっ彼氏とか、いたりするのか、ですか」


不思議な文章で紡がれた言葉と真っ赤になった影山くんの表情に
私の顔まで熱くなったのを感じた。


いやだってさ、そんなこと聞いてくるなんて期待しちゃうじゃん…っ


誰に向けたでもない言い訳を心の中で呟いていると、



「さゆさん、俺…っ!」



ずっと好きでした、なんて真っ赤な顔を隠すこともなく大きな声を出した彼に負けじと
私を声を張り上げた。


「わ、たしもっ好き、です…っ」




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