「さゆっち!!」
「黄瀬?」
廊下を歩いていると聞こえてきた声

いつもは声をかける前に抱きついてくるくせに。
そう思いながら振り返る

「…は!?」
「逃げてッさゆっち!!」
「っふっざけんな、黄瀬ぇーッ!!」
怒鳴りながら屋上向かって走り出す

なんで私が黄瀬ファンに追いかけられなきゃいけないわけ!?
後ろを見たときに目に飛び込んできた光景が頭によぎってゾッとした
…人ってあんなに狂気じみた顔できるんだね

バタンッ
「っはぁ…ッ」
屋上の扉を勢いよく閉めて鍵をかけてしゃがみこむ

「っバ、カ黄瀬…ッ
なんでっ私まで、巻き込む、のよッ」
「ごめん、さゆっち…ッ」
息が上がってる私と平然としてる黄瀬
くっそー…
やっぱ運動しないとダメか…

「さゆっち?」
「いや、もういいよ。うん
アンタがモテるのなんて今に始まったことじゃないしね」
そう言って息を大きく吸って立ち上がる

「てか、私まで逃げる必要って全くなかったよね?」
今まで、何回も追いかけられる黄瀬は見てきた
でも逃げたのは初めてだった

「いや、その…」
「何よ?私は被害者なんだから聞く権利あると思いまーす」

珍しく歯切れの悪い黄瀬の顔を覗き込みながら尋ねる

「…告白されて」
少し間を開けて口を開いた黄瀬に注目しながら再び座り込む

「うん」
「断って…」
「うん」
「好きな人、いるからって」
「…好きな人いたんだ」
少し胸が痛んだ
…なに?これ

「さゆっちが好きだって言った」

「…え?」
いま、黄瀬は、誰を好きだって言った?

言葉をうまく理解できなくて思わず黄瀬をジッと見てしまった
黄瀬は私が理解できてないと気づいたのか

「さゆっちが好きなんスよ」

と、笑いながら言った
…そっか、私

「黄瀬が、好き…」
だから胸が苦しかったんだ…

口に出したら止まらなくなって、嬉しそうに笑う黄瀬を見てまた胸が締めつけられた



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