「なんで居る!?」

声が聞こえた方に視線を向けると、オレンジ色の髪の毛をした男の子が影山くんを指差していた

あれ、あのコ…
あ、影山くんと試合してた雪ヶ丘中の1番のコだ

無名校だったからなぁ…
調べようがなくて名前わかんなかったんだっけ

「いや〜!まさか北川第一のセッターがウチにねぇ〜!」
「でもぜってーナマイキっスよ、そいつ!」
「またお前…誰彼構わず威嚇すんのやめろよ?」
「そっそんな事しませんよ、俺!」
「ちわス!」
「おース」
影山くんの声に応えながら入ってきた大地さんに続いてスガさんと龍が入ってきた

「…ねぇねぇ、キミ」
「あ、はいっ!?」
影山くんに話しかけているみんなを横目に、オレンジ色の髪の毛の男の子に声をかけた

「名前、なんて言うの?」
「え、あっ名前…ッ?日向です!!」
「日向くんかぁー。…あのさ、あのさ…ぎゅって、していい?」
「え、ちょ、えぇ!?」
戸惑っている日向くんにぎゅってと抱きつく

やっぱり思った通り、日向くん抱き心地良いーっ!!

「こら、さゆ」
「あ、スガさんの意地悪…ッ!!」
スガさんは、私の首根っこを掴んで日向くんから離してため息をついた

「なんでですかー!?」
「困ってるだろ、新入生を困らせるな」
ムスッと頬を膨らませてそっぽを向くと、日向くんを見ながら口をパクパクしている龍が目にはいった

え、なんか怖いよ、龍

「あっおっお前ェ…ッ、チビの1番!!」
「えっ!?」
「あーっ!!」
龍の声に大地さんとスガさんが日向くんに注目した

お、スガさんの手離れたっ

「ーじゃあこのもう1枚の入部届の…『日向』って…お前か…!!」
「えっ!?あの?」
「…いやあ…ちょっとビックリしたな…そうか、お前らどっちも烏野か…!」
「?あの」
「俺達去年のお前らの試合見てたんだよ」
「お前チビでヘタクソだったけどこれナイスガッツだったぞ!」
「あっあざース!!」
スガさんと龍の言葉に日向くんは嬉しそうに口を開いた

今のうちに、と思って日向くんに近づくと、再びスガさんに首根っこを掴まれた
…捕まった

「あ、日向くんのバネもスゴかったよ!!」
「それにしてもあんま育ってねぇなぁ!」
龍が笑いながら日向くんと自分の身長を比べた

うわ、性格悪いよ、龍!!

「あっ…ぐっ…確かにあんまり変わってませんけどっ…でも!
小さくてもおれはとべます!烏野のエースになってみせます!!」

おー…
「言うねぇ、日向くんっ」
「おいオーイ!入って早々エース宣言か!良い度胸だなああ」
「いーじゃん、志は高い方が、なァ?」
「がっがんばりますっ」
「お前、"エースになる"なんて言うからにはちゃんと上手くなってんだろうな?
ちんたらしてたらまた3年間棒に振るぞ」
「…なんだと…」
私と龍、スガさんに続いて影山くんが放った言葉に日向くんが怒りを露にした

「おお…どうしてそういう事を言うんだ、影山…」
「友達居なそうだな〜影山」
「え、もうけんか?はやくない?」
「おれだって精一杯…!」
「日向くん?」
「っでも、今までのぜんぶ…全部無駄だったみたいに言うな!!」
日向くんの言葉にしん、となった体育館に、大地さんのため息が小さく聞こえた

あ、なんかヤバい気がする

「…お前らさーもう敵同士じゃないってわかってる?仲間だって自覚しなさいね
バレーボールは繋いでナンボ、大事なのは連係なんだから」

「勝負しろよ、おれと…!」
「ちょ、日向くん!!」
影山くんと日向くんの言い合いを見ながらどうしようかと考えていると、

「騒がしいな、バレー部。まさか喧嘩じゃないだろうね?」
「うわ、教頭っ」
「"先生"っ」
「…先生」
入り口から顔を覗かせた教頭に嫌悪感丸出しの表情を見せると、大地さんに睨まれた
…すんません

「喧嘩!?まさか!切磋琢磨ってやつですよっなっ?」
「そうですよ、教頭…先生っ」

「サーブ。打てよ、全部とってやる
…お前のサーブ、去年は1本しかとれなかったからな」
…確か、その1本って顔でとってたよね

「…おれだって…イロンナ人達に手伝ってもらって練習してきたんだ
他の部の奴とか、女バレとかママさんとかっ
もう去年までのおれとは違う」
「…去年とは違う…か。そうか、俺だって去年とは違うぞ」
か、影山くん笑った!?

「コラコラ、君達、勝手な事はやめなさいね」
「あれは1年生かね?」
いら、ときてる大地さんの表情を見て、冷や汗が流れたのを感じた

ヤバい…そろそろ本気でヤバい…ッ

「行くぞ」
ジャンプサーブ?去年は普通のサーブだったのに…あー、大地さんに怒られるのわかってるのに、ついつい見ちゃう…ッ

ドッ!!
影山くんの打ったサーブは、勢いを失わないままボールを避けた日向くんの隣におちた

「うわぁ…」
「俺もとれるかわかんねー」
スガさんと龍も日向くんと同じように戸惑った表情をした

「それの、どこが去年と違うんだ」
「ーもう1本」
「おい!」
「主将の指示を聞かないなんて問題だねぇ」
日向くんが立ち上がった直後に、再び影山くんのサーブが打たれた

あー、大地さん、もう少し我慢しててくださいぃ…ッ

「あ、」
反応速いっ
きっちり正面でボールを捕らえれて、

「ほぐっ」
捕れるかと思いきや、ボールは日向くんの腕に弾かれて日向くん本人の顔に当たり、教頭の頭にぶつかった

「ヤベッスンマセ、んっ!?」
影山くんが教頭に謝っているときに、教頭の髪の毛が飛び、大地さんの頭上に乗った

「だ、大地さん…ッ」
「…アレ…ヅラだったのか…!」
「気付くの遅ぇよ。皆入学式で気付いてたぞ」
「ブォッフ!お前らっ!プクック、黙れっ」
「田中も黙れ!!」
影山くんと日向くんの会話にあからさまに大爆笑している龍にスガさんが注意した

「…澤村くん…ちょっといいかな…」
あぁ、大地さん…ッ

30分後

「幸いにもとくにお咎めナシ、謝罪も要らない
−が、何も見なかった事にしろ。だが、お前ら」
「お前がちゃんととらないからだ、へたくそ
何が"去年とは違うだ"ふざけんな。期待して損した、クソが」
「いちいち一言余計だなっ」
「−なぁ、少し…聞いてほしんだけどさ」
…ッこ、怖い!!

「お前らがどういう動機で烏野に来たかは知らない
けど当然、勝つ気で来てるんだろ」
「ハイ!」
「勿論です」
「−烏野は、数年前まで県内ではトップを争えるチームだった。一度だけだが全国へも行った
でも今は、良くて県ベスト8、特別弱くも−強くもない。他校からの呼び名は−
落ちた強豪"飛べない烏"」
「まったく、誰スかね、そんなポエミーで失礼な名前つけやがったのは!」
「烏野が"春高"で全国大会に出た時の事はよく覚えてる
近所の高校生の…たまにそこらですれ違う高校生が、東京のでっかい体育館で全国の猛者達と戦ってる
鳥肌が立ったよ。…もう一度あそこへ行く。もう、"飛べない烏"なんて呼ばせない」

大地さん…

「…全国出場を"取り敢えずの夢"として掲げてるチームはいくらでもありますよ」
「バッこのヤロッ」
「あぁ、心配しなくても、ちゃんと本気だよ」
「っ…!」
「バカめっ」
大地さんの言葉に、影山くんと龍が固まった

「−その為にはチーム一丸とならなきゃいけないし…教頭にも目をつけられたくないわけだよ
−俺はさ、お前らにオトモダチになれって言ってんじゃないのね」
あ、龍とスガさんが大地さんからちょっと距離取った

「中学の時にネットを挟んだ敵同士だったとしても、今は"こっち側同士"だってことを自覚しなさいって…言ってんのね
−どんなに優秀な選手だろうが、一生懸命でヤル気のある新入生だろうが
仲間割れした挙げ句、チームに迷惑をかけるような奴はいらない」
大地さんは影山くんと日向くんに入部届を押しつけ、二人を体育館から追い出すと、

「互いがチームメイトだって自覚するまで、部活には一切参加させない」

と言った
…あー新しい抱き枕…ッ!!



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