「どうした?」
「…なんか、無性に抱きつきたくなっちゃった」

笑いながら答えると、何かを察したかのように頭を撫でてくれた

「あ、さゆ」
「うん?」
「今から、久しぶりにあの湖に行かない?」
ふと、頭の中に、告白された日に貴志と見た湖が浮かんだ

「行きたいっ」
「じゃあ夜中、さゆの部屋に迎えに行くから
…塔子さんと滋さんにはバレないようにな」
「うん、了解」
貴志に手を振って、部屋に荷物を置いてから靴を取りにこっそりと玄関に向かった

そのとき、

「ごめんくださーい」
「はーい?」
声が聞こえ、玄関を開けると女の人が立っていた

「どちらさまですか?」
「あの、名前を返してもらいに来たんですが」
「…ッ」

ヤバい、妖!?

そう思ったときにはもう遅くて、

「あんたも、見えてんだね」

そう言いながら笑った笑顔にぞっとした瞬間、意識が遠のいていくのを感じた



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