行く先に





布団の端からはみ出した私の手のひらに、
そっと重なる貴方の手のひら。
とても驚いた。
ただ、泣きたくなる程、温かかった。

あれはいつの記憶だろう。

私は、白眼を酷使し過ぎて、一時的に視力を失った事がある。

本当に何も見えなくて。
私は怖くて眠れなかった。
だからネジ兄さんは、私の傍に、
私が眠るまで、居てくれたの。

ずっと永遠に、見えなかったらどうしよう。
忍としての夢も。
大好きな人の笑顔も。
そして、隣に居る貴方の事も見えないのかな。

目の前には、絶望しかない。

「ヒナタ様…泣いているのですか?」
「……。」

瞼に当てていた白布に涙が染みていく。

「布を取り替えましょう」
「すみません…。」





私は嘆く様に、暗闇の日々を数えていた。
14日目。
布を取り、試しに目を開くと、ぼんやりと光が射した。

霧が晴れて、貴方と目が合った。

「見え、ます…ネジ兄さん…!」
「本当ですか、ヒナタ様…」
「はいっ…ぼんやりと…だけど、見えます」

すると貴方は、何も言わず、
ただ私を抱きしめた。

光を取り戻した事よりも、私は貴方に愛されているのだと、知って、嬉しかった。



ありがとう。
ずっと、私の隣で眠ってください。
ずっと。
この先も。
傍に居て下さい。


人生には、「別れ」がある。
早いか、遅いか。
必ずそれはやってくる。
共に過ごす時が長くなるほど、想いが深いほど、辛く悲しい。

けれど、また出会えると、信じていれば。
勇気が湧くでしょう。
ううん、本当は、それは「別れ」ですらないのかも。



わたしは大好きな人との結婚を決めて、この部屋を明日出て行く。

けれどネジ兄さんは私のすぐ傍にいる。
見えないけれど、感じる。
私の幸せの傍らに。
きっと微笑んで、ずっと一緒に居てくれる。

「愛しています…。」

心から、そう言える人。
この世に2人いてもいいよね。
流れ落ちる涙を拭ってくれる、温かなぬくもりを頬に感じるもの。

ほら、やっぱり…。
あなたは、傍に居るのでしょう?


あなたに守られたこの命はひとつじゃない。
私はずっと、あなたの思いを抱いて、生きてゆきます。
























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