寄り道でもして


「…帰るか。」
そう言ったあいつの言葉に、俺は驚きのあまり、自分がいかにアホ面になっていた事か。

「ちょっ、サスケ、まままま、マジで!?」
部活の終わる時間がいつもバラバラで、
俺とお前が一緒に帰れる事自体が奇跡だってのに。

サスケが「寄り道」しようなんて誘ってくれたのは初めてだ。
嬉しさのあまり俺の顔は眉間に皺が寄り鼻の穴は全開で、
サスケはそれを見て一瞬「うっ」と引いていた。

「…嫌ならまっすぐ帰るけど?」
「いやいや、嫌な訳がないってばよ!!やったー!嬉しい!嬉しい!
なぁなぁ、どこ行くぅ!?」
驚きの後には嬉しくて、もう笑いが止まらない。
「うわ…うぜぇな…お前のテンション…。」

やっぱ言わなきゃよかった、と呆れながら頭を抱え込むサスケの頬は、少しピンク色に染まっていた。
柄にもねぇ事言って、照れてるサスケ、可愛過ぎるぜ。(じゅるり)

「あれだな、カラオケとか!密室で二人きりだし!(ぐふふ)」
「…お前マジ殴りてぇ…。」
「えぇぇ!?なんで!?ダメなの!?」
「無理。それはキバとかシカマルら辺と行けよ…
俺は店に入るだけであの騒音には吐き気がするんだよ。」

もっと静かなところか…それなら。
「ど、どっかで、お茶でもする?お洒落なとこでさぁ〜ケーキでも食いながら。」
「お前とわざわざ『お洒落なとこ』行って向かい合って喋る事なんかねぇ。
っつーか甘いもの嫌いなの知ってるだろこのウスラトンカチ。
っつーか男ふたりカフェ、想像しただけでキモ過ぎて吐く。」

サスケさん、色々死語です。

「じゃぁなに!?何だったらいいんだってばよ!
そっちが言い出したんだから!お前が提案しろ!」

きっぱりと言い切ると、サスケは眉を寄せて、頭を悩ませ始めた。

カップラーメンも出来上がりそうな、およそ三分の沈黙の後。

「はぁー…だめだ、野郎二人じゃどこ行ったって浮くよな…。」
サスケが吐き捨てるように呟いた。

揺るぎない事実ですね、サスケさん。

「それを言っちゃおしまいだってばよ…。」
「…じゃぁ諦めて帰るか…。腹減ったし…。」

「やーだー!!寂しい!!」
「はぁ…しょうがねぇだろ。今日は一緒に帰れただけでも良い、俺は。」

う、ドキッとしちまった今。
でもせっかくサスケが言い出してくれたから…
このまま帰りたくない。

もっと長く一緒に居られたら、本当はどこだっていいのに。

と、その時、ちょうど通学路にあるいつものローソンの前を通りかかった。

「サスケ、じゃぁさ、コンビニ寄って行こうぜ!アイスでも買って、公園で食おうよ。」
「…ま、無難だなそれが。甘いものはいらねぇけど。」

くすっとサスケが嬉しそうに笑った。

はぁ、コンビニとは人類が開発した地上の天国だってばよ。
そしてサスケの笑顔は天使だってばよ。

一緒にあれこれ言いながら、俺のアイスを選んだ。
で、結局一番安いガリガリ君。
サスケはペットボトルのお茶を買った。

たまに寄る公園のベンチにふたりで座って、涼しい風に当たりながら
ひとときの幸せをめいっぱい満喫した。

「サスケと一緒に食うアイスはうめぇ〜な〜!」
「そりゃ良かったな。」
「一口食べる?」

甘い物が大の苦手なサスケくんに向けて、
ただの冗談で言った、つもりが…。


冷えた唇に、ふわっと広がる温かい感触。

「やっぱ…甘ェな。」

サスケに…チューされた!!
「サスケ…おまっ……////!!(ドキドキドキドキ!!!)

「ん?」
涼しい顔でお茶を飲むサスケ。
不意打ち過ぎて俺は取り乱しまくっているのに。
まったく罪な男だ。

「あれだな、どっか寄り道するのに良い場所…もっと探すか。」
ほっとひと息付きながら、サスケが優しく笑って言った。

「そ、そうだな…。」

もう、嬉しくて、しょうがない。
制服で放課後デート、青春はまさにコレに尽きるってばよ。

緩みきった顔で、俺が「ずっと帰りたくないな。」
と照れつつ言ったら、

サスケはハッとして、突然ベンチから立ち上がった。

「ど、どうしたサスケっ!?」
「そうだ!俺8時から見たい番組があったんだ!特命警察!父さんが出るかもしれねぇんだ!
じゃな!ナルト、また明日!!」
「…へ!?」

今までの時間が幻のように。
俺はあっという間に一人取り残されてしまった。

溶けたアイスがポトリ…と地面の砂を濡らした。

俺の帰り道は、いつも気まぐれなあいつに振り回されて…終わるんだってばよ…。



「あ…アタリだ…。」












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