狂月




「きゃっ…。」

短く、戸惑うような、声が上がる。

「す、すみません、ヒナタ様!」
「い、いえ、…。」

慌てて、俺は風呂の脱衣所の扉を締めた。



(まさか、ヒナタ様が居るとは…。)

深夜を回った遅い時間だったので、誰も起きている筈は無いと思っていた。
ましてや、彼女がこんな時間に風呂場に居るなんて。

予期せずして、一瞬見えてしまった、彼女の艶かしい濡れた素肌。

不謹慎な事に、押し殺していた雄としての本能が、自分中で静かに沸き起こった。



俺は、今度は狡い確信犯として、再び脱衣所の扉を開けた。

「えっ!?ネジ兄さん…!?」

ヒナタ様は、震えた声を上げて振り返り、ひどく赤面した。

怯えた表情で下着だけを身につけた体を、両腕で隠す様に覆う。

その痴態を見て、尚更興奮が高まった。


「ヒナタ様、こんな時間に、鍵もかけずに無防備に入浴するなんて…危険過ぎると思いませんか?」

「ご、ごめんなさい、…じゃなくて、や、出てって下さいネジ兄さん、いや…見ないでっ…!」

「貴方には身をもって分かって貰わないといけませんね。」

俺はヒナタ様の体を眺めたまま、脱衣所の鍵を片手で締めた。

カチャリと、鍵の掛かる音と共に、彼女の体がびくっと震えた。

「何…する気ですか…?」
「決まっているでしょう。」

壁際で身を固まらせるヒナタ様の傍に、じりじりと歩みよる。

「ま、待って下さい…やっ!」

「自分の体がどれほどいやらしいか、分かっているんですか、貴方は…。」

覆い被さる様に追いつめると、彼女の瞳が不安気に揺らいだ。
俯いた顔も、体も、綺麗な桃色に染め上がっている。

可愛い。
濡れ髪、体に残る水滴、洗い立ての石鹸の香りがたまらない。

白い下着を纏った、二つの膨らみに、ゆっくりと手を這わせた。
滑らかな布の上から揉み込むと、彼女は体を捩って抵抗した。

「い、いやぁ…!」

俺は自分の腰を彼女の体に押し付けて、壁に固定する様に拘束し、
右手で下着をずらして、今度は直に乳房に触れた。
驚く程の柔らかさと、跳ね返る肌の弾力に欲望を掻き立てられ、
一瞬で下半身が膨張するのを感じた。

ヒナタ様が恥ずかしがって首を振る度に、濡れた髪からシャンプーが香る。
たまらない匂いに酔いそうになる、いや、もう彼女の魅力に完全に酔っている。
もう止まらない。
もっと、もっと…。

「あなたが欲しい。」
「そ、そんな…あぁん!」
「あまり大きな声を出さないで下さい。家の者が起きてしまいますよ。」
「ネジ兄さん、お願い。こんな所では、や、やめて…」
「ここでなければ良いのですか?」
「そう言う訳でもありません…!こんな、急に、だめ…。
さ、触らないで…恥ずかしい、あ、あぁ…んっ!」

ヒナタ様の甘い声をもっと聞きたいが、あまり大声を出されても困る…。

俺は声が漏れないように、自分の唇で彼女の唇を覆った。
口付けをしながら、さらに体中への愛撫を続けた。

柔らかく、赤く濡れそぼった唇を、夢中で吸い上げる度に、鼻にかかった陰媚な声が漏れた。

「ん、んん…ふっ…!」

舌を絡めて、さらに口内を味わい尽くす。
脇腹、太腿と、下へ向って順に手を這わせていく。
驚く程きめ細やかな、絹のような素肌に、思わず熱い息が漏れた。

そのまま秘部へと指を滑らせた。

「ふぅぅん…んん!!」

人差し指で、下着越しに押す様に軽く触れると、
彼女は下半身をひどく捩らせて、さらに甘く切ない声を上げた。

指を窪みに沿って、前後にスルスルと滑らせて愛撫すると、
「んん!ん!」
腰がビクビクと震えて、何度も高い声が上がるが、その声は俺の唇に吸い取られていく。

次第にヒナタ様の目はとろんとしてきて、感じ始めた表情へと変わってきた。

「気持ち良いですか…濡れてきましたよ…。」
下着にじんわりと愛液が染みてくる。

唇を離し、体の拘束を緩めても、彼女からはもう逃げ惑う様子は見られなかった。
「はっ…あぁ…あん…。」
下着を下ろして、直に触れると、
「ネジ兄さん…あっ…はぁ…ン…。」
熱に浮かされた甘い吐息を漏らした。

「もうこんなにグチョグチョですよ…ほら、いやらしいですね…
せっかくお風呂に入ったのに、ね。ヒナタ様…。」
「いや、だめぇ…。」

口ではそう言っていても、女というのは一度快楽へのスイッチを入れてしまえば、
幻術に掛かったように従順になるものだ。
それが愛しくもあり、憎らしくもある。

性器への愛撫にとうとう立っていられなくなったのか、
ヒナタ様はその場に崩れ落ちた。

「おっと、…。」
その体を受け止めて、脱衣所の床に静かに寝かせた。
火照った体に、ひんやりとした木板は心地よい刺激になる。
俺も服を脱ぎ捨て、仰向けに寝かせた彼女の裸体の上に覆い被さった。

素肌同士が触れ合い、興奮も限界まで高まる。
キスをしながらやんわりと胸をも揉みしだき、尖った乳首をこりこりと刺激すると
彼女は焦れた声を漏らした。

「もうだめ…ネジ兄さぁん…わたし…アァン…もう…。」
「どうして欲しいんですか?」

意地悪く聞くと、ヒナタ様は潤んだ瞳で、恥ずかしそうに俯いた。

「ちゃんと、言って下さい。ヒナタ様。」
彼女の濡れそぼった秘部にヌプヌプと指を差し入れた。

「きゃぁん…。」
悲鳴に近い、かわいらしい声が上がった。
吸い付くように幾度も収縮し、ぬるついてひどくいやらしい。

「欲しいのか…?ここに、」
「ん…っんん!アアァン!」
「ちゃんと言ったら、あげますよ、ヒナタ様。」
くすっと笑って言うと、ヒナタ様は泣きそうな顔で俺を見つめて来た。

「いじわる…。」
「貴方が可愛いから、いじめたくなるのは当然でしょう。」
「ん…わたし、」
ヒナタ様が、ぽろりと切ない涙を零した。

「…ネジ兄さんのが、欲しい、です…。」
震える声、潤んだ瞳が、可愛くてたまらない。
「よく言えました。」

愛液が溢れる彼女の中へ、隆起した陰茎を突き入れた。

「アァァン!!」
「くっ、力を抜いて、ヒナタ様…!」
「きゃぁ、あっ、アンッ!!」

腰を押さえながら奥深くまで挿入していく。
キツく、ぬるぬると湿って、そして温かい。

目眩がしそうな快楽。
ゆっくりと抜き差しを繰り返すたび、吸い付いてくるヒナタ様の恥部の壁。
その感触に酔いしれ、俺は夢中で腰を振った。

「あっあっ!!だめぇ!!ネジ兄さん!!
「…ヒナタ様…あぁ!」
互いに深い快楽に溺れ、声を声を抑えられない。
このままでは誰かに聞かれてしまうかもしれないが、
もうそんな事を気にしている余裕は皆無。

「わ、わたしもう…アッ!!アァァン!」
甲高い声と共にヒナタ様は絶頂へ達した。

中がうねるように収縮し、その感触に射精してしまいそうになったので俺は性器を引き抜いた。
彼女の胸の谷間に、精液を放った。

「あ…あぁ…ネジ、兄さん…。」
「はぁ…はぁ…ヒナタ様…。」

熱に支配された虚ろな瞳、白濁液を浴びた彼女の裸体の妖艶さは、
達したばかりの俺を満足させてはくれなかった。
この熱は留まる事を知らない。

「好きです、ヒナタ様…。」
「…ネジ兄さん…。」
強く抱きしめて呟くと、彼女も力の入らない腕で、優しく抱き返してくれた。

「すみません、こんな場所で…あなたの体を見たら、…もう、抑えが利かなくて…。」

ヒナタ様は顔を赤らめて、首を横に振った。
「いいんです…。すごく恥ずかしかったけど、わたしも、本当は…
すごく、ドキドキしてしまってたの…。急に、ネジ兄さんが…。」

恥ずかしそうに、消え入りそうな声で告白する彼女を見たら
またたまらなくなって、もう一度犯したくなった。

なんとか保っていた一部の理性を働かせて、ヒナタ様の体を抱え込み、バスルームへ連れて行く。
さっとシャワーで流してあげたあと、早急にタオルを撒いて、抱き抱えて寝室へ移動した。

まだまだ足りない。
しかし、今度はじっくりと、愛を深めながら彼女を抱こう。


「ヒナタ様、お願いですから、脱衣所の鍵は閉めて下さいね。
俺以外の奴に見られたら…どうするんですか。」
「え?そ、そうですね…気をつけます。」
「許しませんよ。今夜はたっぷり反省してもらいます。」
「そんな…、あっ…!!あぁん…。」

タオルをはぎ取って、彼女の体を舐め回した。

「ヒナタ様の…素敵な体を、他の男に見られる訳にはいきません。
こんなに綺麗な体…誰にも…渡したくない。」
「……ネジ兄さん、ごめんなさい、はぁ…はぁ…
分かったから、もっ、あぁん!!ゆる、して…。」

恥部へも舌を這わせていくと、痙攣したようにビクビクと腰が震えた。
全てをもっと、味わい尽くしたい。

「貴方の責任ですよ。今夜は独り占めさせて下さい。
俺は貴方を、貴方だけを、愛してるんです。」

「はぁ…、私も…好きです、ネジ兄さん…。」

快楽の奥にある、限りない愛しさを込めて、彼女の体を強く抱きしめた。



















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