愛している人。
その人が傍にいると、きっと安らかに眠れるのだろう。

僕にとって、あなたは違った。
傍にいられると、眠れないのだ。

どうしてなのか、わからなかった。
こんな筈じゃなかったのに。



 ―かなしいふたり―



僕の部屋に布団を一枚だけ敷いて、ガイ先生と川の字に横たわった。
これは特別じゃない。
いつものこと。
任務の後、晩御飯を一緒に作って、一緒に食べて、そのまま泊まっていく。
この流れがいつの間にか習慣になった。
八割方僕の家に先生が来てくれる。

冷蔵庫には僕は飲まないビールが常に冷やしてあって。
先生の部屋着もあって。
歯ブラシもあって。

まるで、同棲カップルみたいですね、なんて冗談で言ったら、先生は驚いたあと、笑っていたけど、本当はどう思ったんだろう。
普通の男女だったら、この後、当然そういう行為をするのだろう。


毎日激務に追われて疲れが溜まっているのに加え、お酒が入ったガイ先生は、すぐに豪快ないびきを立て始める。
別に、それがうるさくて眠れないわけではなく。

…いつからだろう。
ガイ先生に抱かれたいと思ったのは。


たぶん、自慰行為を知ってからだ。
したくなる前の、下腹部が、きゅう、って締まるように苦しくなるあの感じ。
先生が、隣に寝ていると、必ずこの気持ちになる。
ただ単に、若いからとか、性欲が有り余っているからとか、そんな偶然な事じゃない。
僕は確実に、先生を意識して、おかしくなっている。
昼間顏を合わせる時には、決してこんな気持ちにはならないのに。

憧れのガイ先生が、熱血スーツを脱いで、スウェットに着替えてビールなんか飲んでると、なんだか違う関係になったみたいで変な感じ。
この時の先生は、昼間と違う匂いがする。

なんというか、失礼だけど、ただの男の人みたいで。
僕もパジャマに着替えて、リラックスして話しているから、きっとただの男の子みたいに見えているんだと思う。

たまに先生はひどく酔っぱらうと、「おいで」と僕を手招きして、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「お前はほんとに可愛い、可愛いな…なんでそんなに可愛いんだ…」
そんな言葉を口にしながら。
愛情として受け取る気持ちと、別の想いが混じりあって。
僕は笑い飛ばしているけど、心臓がドクドクして、顔も体も熱くなって、なんだか泣きたい気持ちになる。


手を伸ばして触れてみようかな。
規則正しく寝息を立てる、あなたの、その大きな背中に。

きっと笑って、僕を抱きしめてくれるだろう。

そして、僕はまた、かなしくなって、泣きたくなるんだろう。









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