おねえさんとは、兄さんにはナイショで入った研究室で出会ったんだ。最初は眠ってばっかりで、僕が一方的に見ているだけだったけれど、しばらくするうちに、おねえさんと会わせてくれるって、兄さんが言った。これは、僕が兄さんに研究室に入ったことをほのめかしたからだ。あんまりいいことじゃあ、ないと、僕もおもう。とにかく、それでおねえさんとお話しをするようになった。少しうれしかった。
目がさめたおねえさんは、とってもきれいだった。きれいっていうのは、顔のことじゃなくて、もちろんおねえさんの顔もきれいだけど、それ以上にふんいきみたいなものがとてもきれいだと思った。気のせいかもしれないけど。それで、名前も教えてもらった。おねえさんの名前。ナマエっていうんだって。テレビで男のひとがよく言うみたいに、「いい名前だね。」って言ったら、おねえさんは、「ナマエは私を含めたシステムの総合名称です。」って言われた。なんだかむずかしくてよくわからなかった。
体調がよくなってから、おねえさんはよく、僕と遊んでくれるようになった。兄さんのそばにいることも多くなった。おねえさんと一緒にいるときの兄さんは、ちょっとだけふんいきがいい。だから、おねえさんにはもうどこかに行ったりなんてしないでほしいと思う。ただ、兄さんたちが、バリアンがどうとかって言いはじめてから、おねえさんも、帰ってはくるけどしょっちゅう出かけるんだ。大変なのはわかるけど、すこしさびしい。早くいざこざがなくなればいいのに。