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 俺は真月零であり、誰からも愛される人格でいなければならなかった。そして彼女は真月零が好きだった。俺自身も彼女が気に入っていた。陥れるために作った、反吐の出る様な顔を、彼女に惚れられたのは不覚だった。それならば、最初から彼女には近寄らず、本来の姿で攫いに行けばよかったのに。地団駄を踏みそうになって、やめた。側では、遊馬と親交が深い彼女が、当番の仕事を手伝っている。はっとして輪に加わった。
 こんな事で信用を買えるのだから、易いものだと思った。日誌を書きながら遊馬に笑いかけている彼女はまだ、俺に好意を向けている。掠めるなら今の内だと無意識に考えた。
 手伝えばすぐに当番の仕事は終わった。いつもならここで黒板消しを落としてチョークの粉を床にばらまいたり、しくじった風を装うが、今は彼女の事が頭の中を占めていたからやらなかった。「またなあ真月」、「真月君ばいばい」と声がしたので笑顔で返した。
 別々の帰路を辿って、小さくなっていく二つの人影を校門から見届けた頃には、決心がついていた。

 彼女が帰宅する時間は知っている。途中で何らかのアクシデントが起こらない限りには、もう家で寛いでいるであろう時間帯だ。親が共働きと聞いていたから余計な気掛かりもない。爪の長く尖った、自分の手のひらを見遣ってから居間の床を踏んだ。ここでは土足というものになるのだろうが、思っていたより音が鳴らなかったので気にしなかった。
 それから狭い廊下に出て様子を伺った。彼女の部屋から、少し物音が聞こえる。立て付けが悪いのだという彼女の話を思い出した。扉は完全に閉まっておらず、微かに隙間が空いている。
 そこから中を覗いて見た。ベッドに横たわりながら、Dゲイザーを触っている。通話をしている様ではなかったので、静かに扉を開け、構わず入っていった。名前を呼ぶと、彼女は俺を見るなり跳ね上がる様に怖がった。

「ひっ……あ、あ、あの、どなたで……ひぃっ」
「出会って最初に言うのがそれかよ、もっと他に言う事があるんじゃねぇのかあ」
「えっ、えっとあの……だ、だれ、なんで、ああ」

 酷く混乱している様だった。得体の知れない格好をした男が突然、部屋に入ってきたのだから仕方のない事だろう。彼女にとって、面識のない、知らない男が自分の名前を知っているのは恐ろしい事になるのかと思った。上体を起こしてびくびくと怯えている彼女の手首を引っ張って、顔を近付ける。こいつは俺を知っているのに、俺を知らない。甲斐がない気がしてきて、体をシーツに投げ飛ばした。

「分かる訳ねぇよな、ひひ、俺はベクター、真月零だよ」
「そんな……真月くんはこんな事しない、そんな言葉遣いじゃない……」
「そう思ってんなら、勝手に勘違いしていればいい」

 自分が劣勢に追い込まれたのに漸く気が付いたらしく、足で退けようとしてきたが、俺が肩を押しているのが痛い様で柔かった。ばたつかせている足が裾に引っ掛かり、着ていたローブが下に落ちる。俺の格好をはっきり見た彼女は目を見開いて、やはり怖がって抗った。俺は彼女が体の向きを変えようとすると、貧弱そうな腕に力を入れて、爪で痕を付けた。すると抵抗をすれば痛い思いをすると分かったらしく、急に大人しくなった。
 まだ頭が混乱しており、ちぐはぐな言葉を口にする彼女に強いて暴行をした。今の俺の体は、人を愛する様な作りにはなっていない。胸を弄くるぐらいで、性器を十分に解せないまま、自分の性器を宛がう。強引に広げた足に力が入るのが分かった。きゃあきゃあと喚く声がうるさい。彼女の口を手で塞ぎながら、中に押し入った。くぐもった悲鳴が、塞いだ手のひらから振動と共に伝わってくる。

「いい気分だなァ……おいなまえ、俺の名前、呼んでみろよ」
「んぐ、うっ……べく、ひんっ、べくたーさん……?」
「飲み込みが早いじゃねぇか。じゃあ、お前のお友達の正体は、誰だって?」
「ぐすっ……ベクターさん、んっ、あっ」

 随分聞き分けがいい女だと思った。揺り動かしている間、時々はっきりしない事を言っていたが、暫くすると射精感が込み上げてきたのでそのまま出してやった。改めて彼女を見下ろしてみると、俺が気にかけていた彼女の姿とかけ離れているのに意味もなく感動した。
 それから何度か同じ事を繰り返した。彼女の膣口から精液がこぼれ垂れている。何か言葉をかけてやろうと思ったが、「真月くん、真月くん」とぐずついているのに腹が立って、髪を引っ張ってベッドから立ち上がらせた。強引に彼女を連れ、罵りながら浴室まで引いていく。俺は髪を掴んで彼女を浴槽に閉じ込めた。


 お前はこんな作り話を、まんまと信じ込むだろう。何のために俺がこんな話をしているのか、汲み取る事が出来ずに余生を終えるんだ。こんな作り話が何のためにあるのか、変えたばかりのシーツの上で怯え上がるお前は分からないまま俺に踏みにじられるんだ。それでいい。最後に、彼女が俺の名前を呼ぶ声を聞いて、鳩尾がもやもやするのを感じた。



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