ジュードくんって医者なんだよな。
その確認の言葉に、見習いだけど、と曖昧に返したその時はこんなこと想像もしていなかった。
それからもう随分と経つけれど、この悪習は未だに続いている。
僕の心は何度も抉られるだけで。けれど幸せそうな表情で目蓋をおろすアルヴィンに何も言えないまま。

「オレの息の根を、止めてくれないか」

僕は最愛のひとを、たぶん、もう百回は殺しただろう。


新しいぼくをして


誰もいない部屋。ローエンは今日は隣の部屋に宿泊しているし、女性陣と僕たちが相部屋になることはない。
その外界と切り離された空間で、シングルベッドに無理矢理ふたり分の体重を預けて。
僕はいつものように、仰向けに寝そべるアルヴィンの上に跨がった。
毎度毎度アルヴィンが、騎乗位みたいだ、なんて感想を述べるものだから、もうこの恥ずかしい格好にも慣れてしまった。はいはいと受け流すだけ。
アルヴィンの端正な顔と胴体をつなぐ人間の急所、首筋に手をあてがう。
恍惚と息を吐く恋人に目眩がしそうだ。

「いくよ、アルヴィン」
「ああ」

指先に力をこめると、苦しげに、切なげに寄せられる柳眉。それに反して緩む口許。
アルヴィンは拘束されている訳じゃない。僕を振り払おうと思えばいつでも出来る。なのに、けしてそれをしようとはしない。
酸欠に伴って赤く青くなる頬、唇。いつもはシニカルに歪められることの多いそれらは、今は幸せを噛み締めている。

「……っはあ、」

知ってる。アルヴィンが、僕に仮に殺されることで心の安寧を得られること。
自分への罰なんだって。
最初は本気で息の根を止めることを求められた。でも、そんなこと出来るはずが無いじゃないか。
僕が医者であることを確認したのは、生き返るためじゃない的確に確実に殺されるため。まるで、眠るように。
また、アルヴィンの目蓋がゆっくりと閉じた。
これで心の平静を保てるなら、それは必ずしも悪いことではないのかもしれない。
けど、じゃあ、僕はどうなるんだ?
何度も何度もアルヴィンを殺さなきゃいけない僕の心は誰がどう慰めてくれるの?
何度もひとを、仲間を殺して平気でいられるほど僕は強くも無神経でもない。こうして徐々に温かさのなくなっていく掌を平気で握っていられるほど、僕は。

「アルヴィン」

早く、目を覚まして。
きっと数時間後には起き上がって、呑気にシャワーでも浴びに行くのだろう。
そんな逸脱した日常にさらされ続ける僕の感覚が麻痺してしまう前に、キスのひとつでも強請らなければ割に合わない。
今は動かない唇に僕のそれを重ねる、そこに人工呼吸意外の意味合いが含まれていることを、おそらくこの男には一生解ってもらえない。


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豆腐メンタルな屑ヴィンを目指したらなんか酷い子になりました。←


 


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