熱くて、激しくて、辛くて苦しくて少しだけ寂しい行為を終えて、力の抜けた体はただベッドに寝転がるしか出来なかった。
こんなに手酷く抱かれたのは初めてだ。
そんなに回数した訳じゃないけれど、今までのそれは慈しむように優しい手つきで進められてきた。それなのに、今晩はまるで何かに追いたてられるように急いでいて、アルヴィンのあまりの必死さに痛いと抗議する間もなかった。
アルヴィンも、それを解ってるらしい。
動けない僕の代わりに処理を全てやってくれて、今はベッドの淵に僕に背を向けて座っている。
切なさを醸す背中に抱きつきたいけど、半身を起こすことはおろか腕を上げるのも億劫で。

「アルヴィン」
「…ん」
「こっち向いてよ」

少し強めに言うと、ゆっくりばつが悪そうに落ち込んだ顔が振り向いた。目は合わせてくれない。
なんとか寝返りをうって距離を縮めると、居心地悪そうに身動ぐアルヴィン。
アルヴィンは僕より一回りも年上なのに、よくこういう悪戯が過ぎた子供みたいな振舞いをする。きっと叱られ慣れてないんだ。
僕は怒ってないよ。
そう笑うと、また逃げるアルヴィンの瞳。

「…酷いことしたのに?」
「そんなしょんぼりされたら怒るに怒れないよ」

だんだん、悪いのは自分の方なのかも知れない、なんて思えてくる。
それに。

「僕、アルヴィンが不安になって訳わかんなくなるくらい愛されてるんだなって思った」

自惚れかな?
それでも、強く揺さぶられながら頭を占めていたのはアルヴィンへの愛しさだった。
紅茶色の目の奥に、アルヴィンの弱音や本音が見えた気がして。

「変なやつ」
「そうかもね」

力無く笑うアルヴィンの腰に抱き着いて、頭に降るキスの雨を甘受した。


ストックホルム
シンドローム


脳裏を掠めた言葉には笑うしかない。


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情緒不安定なアルヴィン氏をいじめずに受け入れるジュードくん愛してる笑

※ストックホルムシンドローム→事件の被害者が加害者と時間を共にし非日常的な体験(立てこもりとか)をすることで被害者が加害者に対して愛情を持つという心理的現象。


 


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