※猫ジュード



犬は野原を駆けずり回り、猫は炬燵で丸くなる。
懐かしいフレーズが脳裏に蘇ったが、なるほど、カン・バルクは今日も一面銀世界だった。

「なーあジュードくんよ。いい加減出てきたらどうだ」

カーテンを閉めて振り返ると、部屋の隅のベッドで布団がぷるぷる震えていた。
正しくは布団の中身が、だが。

「やだ。寒い」
「一日中そうしてるつもりか? エリーゼ姫が心配してたぞ」

声をかけると、布団を少しだけ持ち上げて琥珀色の瞳がこちらに向いた。
ジュードくんの頭には普通の人間じゃあり得ないモンが付いている。ついでに尻にも。
肉球こそないものの彼は人間と猫が合わさったような見た目をしていて、どうやら猫の性質も持ち合わせているようだ。
布団からはみ出た尻尾が、分かっている、とでも言いたげにゆらり揺れた。

「エリーゼには悪いけど、僕、寒いの苦手なんだ」
「知ってるよ。雪合戦でもすれば暖まると思うけど?」
「そんなの霜焼けになっちゃうよ!」

今度はパタパタと、羽ばたくみたいに黒い三角の耳が揺れた。感情に連動して猫の部分が動く様は、それはそれは可愛らしい。
思わず悪戯したくなるくらいに。

「じゃ、お部屋でお兄さんと暖まるか」
「……え?」
「布団から出なくて済むぞ」

胡散臭さ全開の笑顔を向けるとジュードの顔から血の気が引いた。
シーツを体に巻き付け、ベッドの上に踞るジュードくん。怯える表情もまたかわいい。
マットレスに乗り上げ壁に手をついて逃げ道を塞ぐ。
ジュードの小さな手が、指先が白くなるほどきつくシーツを握りしめていた。

「あっアルヴィン、ダメだよ! ローエンだってこの部屋なんだよ!?」
「まあそう固いこと言わずに」

猫耳が弱点なのは知ってる。
そこに舌を這わせるだけでジュードの全身から力が抜けることも、本当は舐められるのが大好きなことも。
きつく目を瞑って耳からの刺激に耐える姿は、まあとてもじゃないが勿体なくてローエンには見せられないな。
先っぽに吸い付いて、脱力しきった細い体を抱いてベッドに転がる。

「…アルヴィン……?」
「ま、たまには何もせずに寝るのもアリだよな」

人間炬燵という言葉をこの子は知っているだろうか。
ずっと布団にくるまっていたお陰か、ぬくぬく高い体温は抱きついてるだけで眠気を呼ぶ。幸せな気分だ。
本当に本物の猫みたいに丸くなるジュードくんの耳許で、その分春はよろしく、と囁くと小さなため息だけが返ってきた。
発情期が楽しみだ。


一番を呼ぶ


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冬が終わる前に書けてよかった。
それにしても久しぶりすぎる猫ジュードくん。


 


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