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つらい〜の続き
たまご達の未来捏造しまくりです
日々、耳に入る情報は少ない。
いや少なくはないのだが、その中に求める情報はほとんど入っていない。
ほんの一握りの希望を片手に、殉職した戦忍の中に知った名前がないことをただ願うのはひどく滑稽で愚かしく思われた。
それでも、私は愛したひとの名前を探す。
辛い幸せのはなしこうしてまた舞い戻ってしまうほどに、この学舎は居心地が良かった。
懐かしい愛しい鶯張りの廊下を音もなく進み、今は今の生徒が使っているかつての自室を訪ねる。授業中の長屋は静かだ。
造りは同じなのに、すっかり様子を変えた我が部屋。あの頃使うことなく壁際に追いやられていた衝立だけは今もそのままで、この部屋に住まう子供たちの仲の好さを象徴するようなそれに笑みがこぼれた。
「三郎?」
聞きなれた、少し成長した声に振り向くと、相変わらずのボサボサ頭がそこにあった。ただしボロ雑巾みたいな後ろ髪は昔より短くなって、忍術学園の先生らしく頭巾の中に隠れている。
「やっぱり三郎だ」
「何のことでしょう、竹谷先生」
「変装したってわかるんだからな」
「チッ」
学園の教師にうまく化けたつもりだったのだが、長年の付き合いの友人には無駄だったようだ。
変装を見破られた悔しさから舌打ちはしたが、しばらく会ってなかったのに自分の気配を覚えていてくれたことが実は嬉しい。なんて口が裂けても言わないが。
仮面を外すと、竹谷先生ことはちは嬉しそうに表情をほころばせた。
「久しぶりだな!」
「ああ。元気にやってるみたいだな」
「三郎もな。来いよ、少し早めの昼飯にしよう」
食堂への道すがら、はちはひたすらしゃべり続けた。積もる話もないから他愛ない世間話だが、言葉を交わすことそのものを楽しんでいるだけだからそれでいい。この前雷蔵と勘右衛門にも会っただとか、後輩たちがずいぶん逞しくなっていて驚いたとか。
忍術学園にいるといろんな人が訪ねてくるらしく、かつて教室を共にした仲間たちの話が一番多かった。
それは城仕えの自分には有難い情報。みんなの安否はいつでも気になる。
「中在家先輩は今でもときどき図書室にいらっしゃるんだ」
「それから、七松先輩はずいぶん有名になったよな」
「兵助とはあまり会えてないけど、ここ数年ずっと手紙でやり取りしてるんだ」
ぽろぽろはちの唇からこぼれる人々の名前。
懐かしい、もしかしたらはちは口にするのを躊躇うかも知れないと勝手に思っていたそれらは、しかし何の傷も痛みもなく発せられた。
当然だ。彼らはきちんと全てに決着をつけたのだから。
それでも、はちに会わなかったこの何年間か、気がかりだったことのうちの一つだ。
お節介と言われるかも知れない。余計なことに首を突っ込んでいる自覚はある。けれどそれだけ彼らは苦しんでいたから。
幸せなんて、ちっぽけなものならば宙に散らばっているほど簡単で単純なものなのに。それに気が付けないとき不幸せなのだけれど。
そんなものを必死で掴もうともがいていたから。
「はち」
「ん?」
中在家先輩や七松先輩がどうしているかはよく知らない。
兵助は全くと言って良いほど変わっていなかった。
「……いや、」
はちが過去のあれこれに縛られていないなら、それで良い。なんてこれも口が裂けたって言ってやらないけど!
「腹減った」
食堂のおばちゃんのご飯の味を思い出して、舌の上にじわりと唾液が広がった。
今度、兵助に会ったなら。
お前の願いどおりはちは幸せそうだったよ、と。そしてご飯が美味しかったよ、と。
教えてやるのも良いかも知れない。
幸せなはなし----------
浅霧さんへ!
相互記念のつらい〜続編です。
まず、改めて相互リンクありがとうございました^^*
本編では五六年の中で唯一セリフがなかった三郎を出してあげたいなーという目論見の結果、竹谷に焦点を当てた訳ですが。
そして本編が報われないまま終わったのでちょっと救済計画(六ろは救われてない←)のつもりだったのですがいかがでしょうか…!
六年に焦点を合わせてほしいしあんま救われてねぇよバカ野郎!的なあれこれ他苦情がありましたら24時間う受け付けておりますのでっ
こんなもので良ければもらってやってください(*´艸`)
ありがとうございました!
※浅霧さんご本人のみお持ち帰り可です
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