※現パロかつ年齢操作
くいなちゃんはおれ達より歳上だ。おれ達が小学校四年生で、くいなちゃんは六年生。だから下校の時間がくいなちゃんの方が授業いっこぶん遅い。
朝はおれとゾロとくいなちゃんの三人で登校するけど、帰りは二人。
緑のまりも野郎と二人っきりだなんて、なんて花がないんだ!ところでまりもに花は咲くのか?
「あーあ。せめておれらが五年生だったらくいなちゃんと一緒に帰れたのになー!」
水曜日、高学年は六時間目まであるのに、三、四年生の中学年は五時間しかない。
いや、授業が少ないのは良いことだ。たくさん遊べるし。だからむしろ願うべきはくいなちゃんがおれ達と同じ四年生だったらってこと。
あーあ。神様は意地悪だ!
道端の小石を蹴る、それが前を歩くゾロの足に当たる、と思った。けどゾロが不意に歩くスピードを早めたから、小石はまた道に転がった。
ゾロはぐんぐん歩くスピードを上げて、そのうち走り出した。
「おい! 待てよゾロ!」
ゾロは足が速い。運動神経がバカみたいに良いから、あっという間に黒いランドセルが遠ざかって。
だけどおれだって足には自信がある。だてにサッカーチームのトップじゃないんだからな!
全力疾走のゾロをこっちも全力で追いかけて、十字路の角を曲がる直前に手首を掴んだ。
「ゾロ! 急にどうしたんだよ」
手を引いて振り返らせると、すごく不機嫌そうな顔と、今にも泣きそうな潤んだ目にかち合った。
え、なんで?
「くいなと一緒に帰りてぇなら一人で待ってればいいだろ!」
ゾロが叫ぶ声が狭い道路に響いて、電線にとまっていた鳥が一気に羽ばたいた。
涙が目には留まっていられそうにないのに拭ったりしないのは、きっとゾロの意地だ。
悔しい、悲しい、寂しいって顔に書いてある。どんなにしかめ面したって、無表情を繕ったって、おれが分からない訳がないのに。
バカだなぁ。
「お前が帰るならおれも一帰るに決まってんだろ」
「…なんで決まってるんだよ」
「そりゃ、おれはゾロに惚れてるからな!」
かわいくて、かっこよくて、きれいなゾロ。いくら世界のレディが可憐でかわいらしいと言えども、くいなちゃんが魅力的と言えども、ゾロを放っておく理由はない。
そう告げると、だんだんゾロのやわこいほっぺたが赤くなって。涙がひっこんだ目尻にキスをすると、容赦ない力で頭を叩かれた。
だけどそれは昔からただの照れ隠しだって知ってる。ちょっと痛いけど。
「帰ろうぜ、ゾロ」
「…おぅ」
そっと握ると、ぎゅっと握り返してくれる乱暴で小さな手が好きだ。くいなちゃんに焼きもちをやいてくれるゾロが大好きだ!
だから、ゾロと毎日一緒に帰れるよう、同じ学年にしてくれた神様には感謝してるぜ。
てくてく、てくてく。
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サンジ視点だけどサンジは小学生だから、文面をいつもよりちょっと幼めにしたつもりだったんですが。
読んでみると変わんねー!←