※現パロ



うっすら汚れたコンクリートに寝そべると、初夏にさしかかる白い陽光が目を焼いた。
思わず目を細めて眉間にしわが寄ったけれど、けして不快な訳じゃあない。むしろ風で冷えた身体を暖めてくれるから心地好い。
本当はこの学校の屋上は立ち入り禁止なんだけど、古くなって錆びた錠を開けるくらいのピッキング能力なら一年生の頃に習得済みだ。

「あー、気持ちいい」

高いフェンスで囲われた空を雀らしき鳥が二羽飛んでいく。
今頃、クラスの仲間たちはこの下で、効きすぎる冷房に凍えながら大して集中もしてない授業と戦ってるんだろう。あるいは敵は睡魔かも知れないが。そんな無謀な戦いをするくらいなら、屋上で思いきり寝た方が良いに決まってる。
だんだん仲良くなってきた上下の目蓋。
襲い来る眠気に逆らわず意識を手放そうとしたとき、明るかった視界に突然影が差した。

「何してるの、はち」

目を開けば学級委員長と同じ顔(正しくはこっちが本物だけど)が見下ろしていた。どんなに似ていても間違えたりはしない。もしも委員長の方だったら、声なんかかけずに蹴り飛ばされるだろうし。

「雷蔵」
「授業サボりはダメだよ」
「いや、雷蔵もだろ」

とても叱ってるとは思えない優しい困り顔の雷蔵は、その表情のとおり咎めにきた訳じゃないみたいだ。
俺の隣、これまたうっすら汚れたコンクリートに座って青く透る空を見上げた。太陽の眩しさに目を細めるのは俺と同じ。
いい天気だね、と雷蔵が呟くのと同時にまた二羽の鳥が滑空していった。

「絶好の昼寝日和だよな!」
「んー、それは勿体ないな」
「体を動かす方がいい? 鬼ごっこでもやるか?」

二人しかいないけど。
雷蔵は、小さく首を横に振って。

「僕は寝ずにはちの寝顔を拝むことにするよ」

………なんだそれ。
柔和な笑顔で時々しれっと訳の分からないことを言うから、雷蔵はちょっと天然なのかなと思う。だって見慣れた幼なじみの寝顔なんて拝んでどうするんだ。
鬼ごっこのために起こしかけた上半身を再び寝かされて、二度焼かれた網膜の上で赤や緑の影がちらちらと踊る。
ふと顔を近付けてきた雷蔵の、微笑みの形の唇が眉間をなでた。
くすぐったい。

「しわが寄ってるよ」

それだけ言うと、雷蔵のあったかい手で目許を覆われた。きっと俺が快適に眠れるようにって配慮だ。優しいなぁ。
だけど意地悪だ。

「雷蔵」

そんなふうにされたら、睡魔なんて吹き飛ぶに決まってるだろ?


ごっこでもしようか


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たまにはどS雷蔵様じゃなくて甘やかす雷蔵で。
あ…抱きしめるの忘れてた…←

雷竹は屋上で抱きしめられて、皺に意地悪なおやすみのキスをするでしょう。






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