※先天性にょっさん注意
 完全なる夫婦注意!





「ユーリ。俺、死んじゃうかも」

その言葉はまだ覚醒しきらない俺の頭には過ぎた衝撃で、小さな脳は一瞬フリーズした。
それからすぐに我に返って、階段を転げ落ちそうになりながら下りて、細い肩を掴んで。自分よりだいぶ低い位置にある碧を覗きこんだ。

「苦しいのか!? ちょっと待ってろリタ呼んでくるから!」
「ちっ、違うのユーリ!」
「じゃあ誰かに命狙われてるのか!? だったらハリーかルブランに、」
「そうでもなくて!」

玄関を飛び出そうとした俺にかけられたレイヴンの声は予想以上にでかくて、だけど三白眼気味の猫目は落ち着かない。
何か言い辛そうに、ふらふら游ぐ視線。ふと、その手が胸じゃなくてお腹に添えられてることに気付いた。
もしかして、尋常じゃない腹痛?

「あの…そのね、」
「ああ」
「………朝ごはん、食べようか」

苦笑しながらリビングを指し示すレイヴン。そう言えばさっきから、美味しそうな香ばしい匂いが漂っている。今日の朝食はトーストと卵焼きかな?
じゃなくて。
死んじゃうかも、なんて言う割には顔色も悪くないし普通にしてるし、大丈夫か?
いやでも、こいつはすぐに何でもかんでも我慢しようとするから、油断は出来ない。
とりあえず席に着いて、向かい側で味噌汁をすするレイヴンを見つめる(ちなみにレイヴンは朝も和食派だ) 。

「…そんな見つめられると、緊張するんだけど」
「死ぬって、何で」
「んー…朝にする話じゃないかな」
「言えよ。心配なんだよ」

相変わらず目線を合わせずに、誤魔化そうとするレイヴン。その手を取ってテーブル越しに迫ると、今度は顔ごとそらされた。
めげずに迫ったままでいると、徐々に薄赤くなる頬。

「最後にシたの、いつか覚えてる?」
「…いつだっけ」

ここ最近は俺もレイヴンも忙しくて、ずっと家を空けていて、昨日やっと一月ぶりくらいに帰ってこれたのだ。そのまま我が家に帰れた喜びに任せて致してしまっても良かったのだが、いかんせん疲れがたまっていて。
だから、少なくとも一カ月以上はシてないことになる。
で、?

「まだ確信はしてないんだけど、さ」
「ああ」
「俺様、――…妊娠、しちゃったかも」

またフリーズしちまったのは、別に俺の脳みその小ささのせいじゃない。と思う。
だって、なぁ?
嫁が妊娠したって、なぁ?
まさか二十歳ちょいで子供ができるなんて、なぁ?
こんな、こんな幸せなことがあって良いのか。良いものなのか。本当に? 本当に?

「でね、これから…って青年!? なんで泣いてるの!?」
「えぁ?」

うれし泣き? 俺、うれし泣きとか初めてかもしんない。ヤバい。ヤバいな嬉しいヤバいヤバい。

「レイヴン!!」
「はいっ」

握っていた手を、片手だけから両手へ。力は強め。って言うかむしろ握ったままテーブルを迂回して細っこい体を力いっぱい抱きしめる。

「愛してる。絶対元気な子産もうな!!」
「あはは……うん、俺も愛してる」

俺の背中に回された腕がいつか抱くのであろう子供を想像して、そっと、唇におはようのキスを落とした。


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いい夫婦の日ぎりぎりセーフですか!?
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