甲高い断末魔の声をあげて、魔物が消滅する。
カロルがにこにこ笑顔で魔物が落としていったアイテムを回収するその傍ら、レイヴンはエステルに行き過ぎたハイタッチ(むしろセクハラと言う)を求めていた。
そのよれよれの首根っこを掴むユーリ。ものすごく目が据わっていて、怒っているオーラ全開。
レイヴンはそんなユーリの顔を見て、やっちまったとでも言うように顔を手で覆った。

「何やら思い当たる節があるようだな、おっさん?」
「えーちょっとおっさん何言ってるのかワカンナーイ」
「そんなおっさんにはお仕置きだな」

ユーリの白魚のような指がレイヴンの色素の濃い頬をつねる。思いきり。
予想以上に厳しいお仕置きにレイヴンは両手を振り回して抵抗した。が、聞き入れてもらえるはずも無く。
びよんびよんと縦に横に伸ばされるレイヴンの無精髭のはえた頬が実は柔らかいのだと知って、カロルとパティとエステルはきゃらきゃらと笑っているし。リタは我関せずの体を貫くつもりのようだしジュディスはむしろ加勢しようと張り切っているし、唯一レイヴンの味方をしてくれるフレンはあろうことかシチューらしきものを作り始めていた。ちなみにルーが真っ赤に煮えたぎっているものをシチューだと認める気はレイヴンには毛頭無い。

「また無茶しやがってこのおっさんは」
「テンペストかましただけじゃないの!」
「雑魚にはエアスラストまでって約束しただろ」
「うぅー」

ずっと平原を歩き通しで疲れが溜まっていると見たユーリは、今朝の早くにレイヴンと(半ば強制的に)約束を交わしたのだった。
レイヴンはいとも簡単に破ってみせた訳だが。

「だっておっさんだけ足手まといなんて嫌だもんー」
「誰も足手まといだなんて思ってねぇよ」
「おっさんが思ってるの」

以前よりずっと前向きになったとは言え、未だにレイヴンには自分を低く見る傾向がある。
みんなが褒めたってお礼を言ったって、ずっと不安が心に巣食っているらしい。

「そんな必死にならなくても、あんたを見放したりしねぇよ」

お仕置きをやめて墨色の前髪に隠れた額にユーリがキスをすると、一瞬で赤く染まる褐色の肌。
ユーリはあれこれ考えるだけでは伝わらないと知っているから、唇に乗せる。言葉にしてではなく、体温にして。
あんたが好きだ。無茶をしないでほしい。俺が好きなあんたをもっと大事にしてほしい。
レイヴンは他人の機微に敏感だから、必ず分かってくれる。その証拠にアヒルのように尖っていた唇が緩く弧を描いた。

「…ありがと青年」
「どういたしまして」

自分より一回りも年下の青年に励まされて、少しの悔しさと気恥ずかしさを感じながら。
レイヴンは広く大きな背中に腕を回した。


が生きている理由をもっと簡潔に説明してくれないか
(本当は言葉なんていらないよ)


----------
ついつい微妙に弱ってるおっさんばかり書いてしまう(´・ω・`)


← 


「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -