※学パロ



俺、もーすぐ卒業なんだけど。
不満げに、誇らしげに、ちょっとだけ寂しそうに胸を張ってユーリは言った。
そうね、まだ国公立の試験が残ってるけどね、おめでとう。
学年末考査の試験問題をパソコンで打ち込みつつ応える。少し投げやりな感じになってしまったが、仕事中なのだ仕方がない。
それより後輩に試験問題流したらただじゃおかないからね、と釘をさす。学年末考査の関係ない三年生と言えど、やはり試験問題作成中は入室禁止にしておけばよかった。

「祝ってくれねーの?」
「卒業式にたっぷりお祝いしてあげるわよ」
「俺に個人的にだよ」

キーボードを叩くのをやめた。
振り返ると口を尖らせ腕組みした青年。頬袋が膨らんでいるのは、この部屋に充満する甘いにおいの元凶エクレアのせいだろう。彼はぷくっと頬を膨らませて怒ったりはしない。

「なーに言っちゃってるの。教え子はみんな平等に可愛がるもんよ」
「フレンはシュヴァーンに祝ってもらったって」
「何してんの兄ちゃんは…」

規則に厳しい兄と融通のきかないフレンちゃんがまさか。
しかし律儀な性格の兄のことだから、場の雰囲気に任せてお祝いのキスくらいはしそうでもある。あの二人は恋人どうしなのだし。
ユーリ青年は兄のことを引き合いに出せば「個人的に」祝ってもらえると思っているのか、既に勝ち誇ったような笑みをうかべているがだがしかし。

「でもダメ」
「なんでだよ!? 俺らも恋人じゃんか!」
「おっさんこう見えても厳しいの。恋人以前に青年は俺様の生徒でしょ」

特別扱いは無しだからね。
マグを傾け、カスタードクリームのにおいに侵食された胸いっぱいに珈琲の薫りを吸い込む。苦く焦げた薫りと味が口内に広がって心地好い。
青年は苦虫を百匹くらい噛み潰したみたいに口許を歪めていた。
本当なら、祝ってあげたい。
恋人の晴々しい門出なのだから、特別にお祝いしていつも以上に甘やかしてあげたい。
けれどそれでは他の生徒に示しがつかないし、教え子はみんな可愛いのだ。

「おっさんのケチ」
「なんとでも」

拗ねた青年は残ったエクレアを全て口に詰め込み、新たにでかいプリンを開けた。カスタードクリームたっぷりのエクレアに続いてカスタードプリンってどうなの。
見てるだけで胸焼けしそうだ、と呟くと青年はザマアミロなんて笑ってる。

「おっさんにも食べさせてやろうか」
「ちょっとその劇物をこっちに近付けないでよ」

大人げない仕返し(事実ユーリはまだ子供だが)を楽しむ悪戯っぽく光る瞳。
彼は、やがて大人になる。
くくられていない横髪を手に取るとそれはさらさらと流れ、重力に従って落ちていった。
擽ったそうに肩を竦める彼が愛しくて。

「卒業式が終わったら、ね」

アパートに独り暮らしの青年にゃちょっと豪華な夕食を作って、胸焼けと戦いながらクレープも焼いてあげよう。
約束だからな、と笑いながら差し出された青年の長い小指に自分のそれを絡めて、もう少し我慢してもらう為にそっと口付けた。


さよなら


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ナチュラルにフレシュすみませぬ(´・ω・`)
なんかユリレイユリぽくなったなぁ…


 


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