※ひたすら暗い



酷く心臓が痛む。
ギシギシといった軋みではなくて、ただ、ひたすらに続く圧迫感。咳をしてそれを吐き出そうと試みるが、渇いた二酸化炭素と共に出てきたのは嗚咽だけ。
もう咳で解決するのは諦めて、しゃんと背筋を伸ばして周囲を見渡した。

灰色に染まった世界。
流れる水は銀色のまま氷のように固まり、空駆ける鳥は黒い影となって宙に浮かんだまま。
人に限らず獣も魚も植物も、皆平面のようにぬらりと味気なく立ち止まっていて。
まるで、死後の世界のよう。
だがしかし立ち止まっている全ての生物は今も変わらず活動し続けていて、この灰色が色付けば再び何事も無かったかのように動き出すのだろう。それを思うと、この灰色を確かに感じている自分はなんと違和な存在だろう。
いや、でも自分はもう死人だから。
死人として世界を見て回って、そしてやっと見つけた仲間。まだまだ幼い彼らも、例に漏れず停止していた。

「青年」

ふざけた愛称で呼ぶが、当然のように彼の目は自分をとらえない。
今は輝きの失せた宝石のような深い紫は、その喉元に突き付けられたビッグバンの圧倒的なパワーを象徴する光に釘付け。
惜しいことをしたな。
いやそれとも、これで良かったのか。

不意に、視界が揺らいだ。

と同時に胸に突き刺すような痛みが走って、既に力の入らない膝は重力に従って地面に沈んだ。
声をおさえることもせずに、痛みをエネルギーに還元して悲鳴をあげる。つんざくような声は、耳にただただ不愉快。
ごめんね、こんなの聴かせちゃって。
聴かせないために、誰にも最後の瞬間を気付かれないようにする為に時間を止めたのに、耳許で叫んでいるのでは意味がない。
ごめんね、
ごめんね、
ごめんね。
もうすぐ終わるから。
このまま胸が潰れてしまえば、全て終わるはずだから。
だから、もう少し。

「一緒に、いたかったな」

早く消えてしまいたかったのは事実。
永遠に一緒にと思っていたのは本音。
そして、もう消えるべきなのが現実。
ごめんね。さよなら。ありがとう。バイバイ。好きだった。大好きだった。泣いてもいいかな。許されるかな。本当に、ありがとう。

愛してくれて。










「───…レイヴン?」










さいごにみえたのは、いろづいたひとみ


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ラスボス戦で寿命がくるレイヴン。
早く死にたいけど生きていたくて、全部を止めたらやっぱりダメだった的な。


 


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